正しい自己認識ができると強くなれる

――SNSでの他己評価は、良い面も悪い面もあると思います。悪い声と向き合うのがストレスになる人もいると思いますが、これからSNSをやる人は、悪い他己評価とどのように向き合えばいいでしょうか。

:メンタルコントロールの方法はたくさんありますが、そもそも私に悪い評価をしてくる人は、「私に興味がある」と思うようにしています。だって、興味がない人にコメントなんかしないですよね。私の悪口を書いている人は、毎日せっせと私のインスタやツイッターを見てくれている。「貴重な人生の時間を私に使ってくれてありがとう」と思うわけです。

平尾:なるほど。

「自己肯定感が低いままの人」と「後天的に自信を持つことができた人」との決定的な違い平尾 丈(ひらお・じょう)
株式会社じげん代表取締役社長執行役員 CEO
1982年生まれ。2005年慶應義塾大学環境情報学部卒業。東京都中小企業振興公社主催、学生起業家選手権で優秀賞受賞。大学在学中に2社を創業し、1社を経営したまま、2005年リクルート入社。新人として参加した新規事業コンテストNew RINGで複数入賞。インターネットマーケティング局にて、New Value Creationを受賞。
2006年じげんの前身となる企業を設立し、23歳で取締役となる。25歳で代表取締役社長に就任、27歳でMBOを経て独立。2013年30歳で東証マザーズ上場、2018年には35歳で東証一部へ市場変更。創業以来、12期連続で増収増益を達成。2021年3月期の連結売上高は125億円、従業員数は700名を超える。
2011年孫正義後継者選定プログラム:ソフトバンクアカデミア外部1期生に抜擢。2011年より9年連続で「日本テクノロジーFast50」にランキング(国内最多)。2012年より8年連続で日本における「働きがいのある会社」(Great Place to Work Institute Japan)にランキング。2013年「EY Entrepreneur Of the Year 2013 Japan」チャレンジングスピリット部門大賞受賞。2014年AERA「日本を突破する100人」に選出。2018年より2年連続で「Forbes Asia's 200 Best Under A Billion」に選出。
単著として『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』が初の著書。

:SNSを通じて知る自分は、新たな発見があります。自分で自分の人間像を思い浮かべていても、SNSからの反響を聞くと、「想像していた形と違う」という新たな発見、新たな自己認識ができるんです。それがまた自信につながる。自信がある部分はさらに自信が強くなり、負けていることは負けていると認められるようになりました。自己認識をしたことで逆に強くなったんです。人に勝とうと思わない部分、勝てないと最初からわかっている部分、自分が勝っている部分。それらが混在していると思えるようになってきました。

――良い部分も悪い部分も自己認識できたから強くなった。

:いちばん怖いのは、自分が今どこに立っているかわからない状態です。密集しているところに立っていたら、密集していない方向に移動すればいい。

でも、密集地にいるのか過疎地にいるのかわからなければ、それもできません。それが、SNSをやっていない人の状態です。

SNSによって社会の中で自分がどの層にいるかわかるので、自分が行くべき方向がわかるのです。ダイエットをするときには、まず自分の体重を知るじゃないですか。何キロでどんな体型かを知ってから走り始める。

でもビジネスになった途端、だいたいの人はとりあえず走りに行くわけですよ。何がいけないのか、ゴールもわかっていないのに走る。だから成果が出ないんです。自分を知り、ゴールを決めてから走り出さないと成果は出ない。自分の立ち位置がわかれば、右に行くべきか左に行くべきかわかります。私はそれをSNSで把握しているということです。

――この本でも、人からの評価で強みを見つけるというエピソードが書かれています。近しい人だけでなく、SNSで自己認識を改めるのは面白いですね。

:SNSによって、相対的な視点で自分がわかるんです。軸が1本しかない人は、自分がどこにいるかわからない。周りに比較対象や壁があるからこそ、自分の位置と広さがわかる。SNSを通じて、空間認識能力が上がった感覚はありますね。

平尾:スーパーメタ認知ですね。顔の見えない人とでもそれができる。それはすごい能力ですよね。会ったことない人との距離間は難しいですから。

:余談ですけど、昔、マッチングアプリをかなりやっていたんですよ。何万人、何十万人の登録者がいますが、いろいろなアプリの「いいね」数で全国1位をとったんですよ。

これは究極のスーパーメタ認知だと思っていて、どうやったら1位になれるか比較するわけです。そこでわかったのは、ちょうどいいプロフィール、ちょうどいい写真、ちょうどいいステータスが存在すること。よく「年収1億」と書いてしまう人がいますが、そんなに稼ぐなんて、何をやっている人かわからない。そこで共感力が下がるんです。自撮りでめちゃくちゃかっこいい写真をあげている人も怖い(笑)。だから、ちょうどいい写真を見つけるためにたくさん撮りました。

そのとき、第三者に撮られた写真、横に誰かがいる自然な写真のほうが好感度が高いとわかったんです。

平尾:感覚でやっていないんですね。

:感覚でやった結果を、もう一度数値化する努力はします。それだけ臆病なんですね。なぜこんな結果になったのか、理由を知らないまま前に行くのが怖くて仕方がない。

――自信があるといっても、無謀ということではないんですね。

:むしろ臆病ですね。