現実の課題には、普遍的かつ人間の本質が参考になる
平尾:宇佐美さんは歴史がお好きで、ローマ帝国の話など会社以外の事柄から類推して相似形を探していらっしゃると思いますが、どういう観点で見ていらっしゃるのでしょうか。過去のリーダーや偉人の意思決定がお好きなように見えます。
宇佐美:共通点を応用する「類推」のほうが、より普遍的に物が見えると思っているんですね。20代のころは、MBA的な抽象化された体系を学び、すぐに使えるHow toに目を向けがちでしたが、そこには限界がありそうですよね。それが現実に自分が向き合う課題に使えないとなると、ほかに何で考えるか。短期的なノウハウではなく、より時間軸の長いものでアプローチしたほうがいい。だとすると、歴史のような、より普遍的かつ人間の本質を捉えているもののほうが参考になります。
平尾:面白いですね。フレームワークを詰め込んでいたときとは違うところに行っているということですね。フレームワークを見て「やらなきゃ」というタイプが多いと思いますが、宇佐美さんは凝縮された過去の歴史や、もっと長いスパンで見たときにどうなるかを考えられる。人間の心理から変わらないものを探し出し、それをうまくビジネスにも役に立てていらっしゃる。
株式会社じげん代表取締役社長執行役員 CEO
1982年生まれ。2005年慶應義塾大学環境情報学部卒業。東京都中小企業振興公社主催、学生起業家選手権で優秀賞受賞。大学在学中に2社を創業し、1社を経営したまま、2005年リクルート入社。新人として参加した新規事業コンテストNew RINGで複数入賞。インターネットマーケティング局にて、New Value Creationを受賞。
2006年じげんの前身となる企業を設立し、23歳で取締役となる。25歳で代表取締役社長に就任、27歳でMBOを経て独立。2013年30歳で東証マザーズ上場、2018年には35歳で東証一部へ市場変更。創業以来、12期連続で増収増益を達成。2021年3月期の連結売上高は125億円、従業員数は700名を超える。
2011年孫正義後継者選定プログラム:ソフトバンクアカデミア外部1期生に抜擢。2011年より9年連続で「日本テクノロジーFast50」にランキング(国内最多)。2012年より8年連続で日本における「働きがいのある会社」(Great Place to Work Institute Japan)にランキング。2013年「EY Entrepreneur Of the Year 2013 Japan」チャレンジングスピリット部門大賞受賞。2014年AERA「日本を突破する100人」に選出。2018年より2年連続で「Forbes Asia's 200 Best Under A Billion」に選出。
単著として『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』が初の著書。
宇佐美:人間の本質は、マキャベリズム的なところがあると思っています。心理学というよりも、どちらかというと人間の本質は何かというところかもしれません。心理学は、ややノウハウ的な感じになるかもしれませんね。
平尾:リクルートの江副さんタイプですよね。戦略論や戦争論もコンサルのときに勉強していらっしゃると思いますが、そういうのは今でも生きていると思いますか。
宇佐美:実際の事業動向、競争相手に勝つことを考えるときには、やはりフレームワークはあったほうが、考えは整理しやすいですよね。
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