現役学生やOB/OGらのナマの声を取材し、20年超にわたって毎年刷新しているロングセラー書籍『『大学図鑑!2023』』。本連載では、82校を500ページ超にわたって詳細に解説しているが、その一部をご紹介していこう。学部ごとの詳しい情報や口コミミニ情報などは本書をご覧いただくとして、大学の雰囲気や文化が良く伝わる部分のみ抜粋した。
皇室御用達のイメージから脱却し、グローバル化を見据えた改革を推進中
■歴史と基本的な立場■
1847(弘化4)年3月、京都御所に設置された学問所が起源。教育目標は「ひろい視野」「たくましい創造力」「ゆたかな感受性」。歴史と伝統を大切にした教育を行っている。
■学生の気質■
ガツガツせず、マイペースでおっとりしたのんびり型が多い。金持ちではないフツーの庶民が大半だが、総じて育ちのよさを感じさせる。和を尊ぶ文化があるので、奇抜なことはしづらい雰囲気。
■世間の評判■
皇族のイメージが強すぎて、他大生から「お金持ちなんでしょ?」といじられる。誠実でまじめなイメージが強いため、金融系、公務員などお堅い仕事には有利。
■学習院大生の生活と性格■
向いているか向いていないかで居心地は天国と地獄!?
都内の大学の中でも、独特の雰囲気がある学習院。まじめさと落ちつきが、彼らの美徳だ。育ちが良いから焦りがなく、従順で、奇抜なことはしたがらない。礼儀正しくて、品が良い学習院生の態度は、たくさんの人から好感を抱かれるだろう。学生の多くも、大学に流れる空気感を気に入っている。しかし、何か尖ったことがしたい、自分の個性を出したいと考える学生にとって、学習院は窮屈な場所になってしまうのもたしか。「金髪にしたときは、キャンパスですれ違う人たちからめっちゃ見られた」(文学部生)、「閉鎖的な雰囲気だとは思う。大学もそのイメージを脱却したいらしく、学生にボランティアといった課外活動を推進しているみたい」(法学部生)。例外的に毛色が違う学生が多いのが、国際社会科学部。ここには、自己主張が強い子もいるようだ。
皇族のイメージが強いが、学生の大半は一般庶民。他大生からは、よく「お金持ちなんでしょ?」といじられることもあるが、「話のきっかけになることも多いので気になりません」(文学部生)と余裕を見せる。内部生の中には、本当に資産家のご子息・ご息女がいるのも事実だが、外部生は「そんな人に限って謙虚で目立たない」(経済学部生)と語る。ひけらかさないところが、きわめて学習院生らしい。
●懐具合…首都圏の出身者が9割弱を占め、地方出身者は少なめ。地方出身者が部屋を借りるのは東武東上線や西武池袋線沿いが多い。資産家の親が月に20万円の仕送りをしているという例はある。内部進学者には由緒正しい家柄の人がたくさんいるが、本当の上流階級は子どものしつけに厳しいせいか、わりと質素。大学から入った学生たちの場合は、他の私大生たちと同程度。奨学金制度の利用者も少なくはない。
●サークル・部活動…116の公認団体がある。静かに交流したい人は文化系のサークル、はしゃぎたい人はオールラウンド、バスケット、野球、ダンスサークルなどに入る。一般的に、チャラい大学サークルと言えばテニスだが、学習院の場合、育ちのいい人たちが爽やかにスポーツを楽しんでいる感じ。ラクロス、スカッシュ、ヨットも活動が盛んだ。能楽や国劇(歌舞伎)などの古典芸能系サークルも多く、落語研究会は日本最古の伝統を誇る。スポーツ系では馬術部が有名で、23区内に馬場を持つ大学は学習院だけである。馬術、ゴルフなど活動にお金がかかるサークルには、リッチな学生が多い。「新歓の時期は先輩がご飯を奢ってくれるのですが、松本楼(学内にあるレストラン。128ページ欄外参照)をご馳走してくれました」(文学部生)というような話も。四大戦、甲南戦というそれなりに盛り上がる大会が行われることもあり、体育会系の部活も活発。学習院大生と学習院女子大生合同の部活である「応援団」は、部員たちが、正門と校舎の間の通路でよく練習しており、目立っている。
●飲み会…目白という「リッチな立地」だけに学生街は形成されていない。「目白は、リッチと言えば聞こえがいいけど、何もなくてつまらない」(法学部生)。飲みに行くのは、高田馬場か池袋。大衆系の安価な居酒屋や、チェーン店を利用することが多い。高田馬場の居酒屋では、早稲田生が大騒ぎしているが、うるさいやつらを尻目に落ちついて飲む傾向。しかし、体育会系の部活や、一部スポーツ系のサークルになると話は別だ。激しい飲み方をして、道端で吐くのも普通。
●恋愛…キャンパス内にいちゃつきカップルは皆無。サークルやゼミでいい仲になる学内カップルが多いが、他大との合コン話はほとんどない。男子の多くはまじめで静かな草食系。女子はしっかりしているが、控えめ。「門限が10時というような人もいて、清く正しい交際しかできない」などという話も。他の大学の男と付き合っている女子学生の場合、相手は早稲田、慶應、上智などたいてい学習院よりも偏差値が上の大学生。社会人と付き合う人も多いとか。
●ファッション…女子は温かみのあるナチュラルガーリー系ファッションが多い。さりげなくブランドもののバッグを持っていたり、ネイルにこだわっていたりする子も多い。男子も優しい色合いの上品できれいめのスタイル。髪の毛も黒か黒に近い茶髪がほとんどで、さながらおばあちゃんの理想の孫という感じだ。派手めな学生もいないことはないが、他大と比べればきわめておとなしい。「学内で目立つ子は、チャラチャラというより、キラキラしてる」(経済学部生)。
■ホンネの就職状況■
強力なネットワークが就職力を押し上げている
例年、就職は良好。採用者数はMARCHの各大学と大差はないように見えるが、学生数の少なさから考えるとかなり健闘していると言える。
伝統的に銀行・保険・証券など金融業界に強い。公正で品格ある校風や、組織の中に上手に溶け込むおおらかな受容性といった部分が評価されているようだ。高度なサービス精神が求められる旅行業や航空業でも実績が高い。約3人に1人は東証一部上場の企業に内定しているというデータもある。従業員1000人以上の大企業に就職する学生の割合が約半数と高いのも特徴だとか。
キャリア支援に関しても、少人数制できめ細かな指導が受けられる。教授陣と学生、卒業生の交流が盛んな校風もあって、縦のつながりが強力だ。特にラグビー部やスキー部といった伝統ある部では先輩の支援が絶大で、OB・OGのサポートが就職力を押し上げている。伝統ある同窓会組織「学習院桜友会」は会員数12万人を超え、世代を超えた交流に力を入れており、学生の就職活動も支援している。「マスコミ桜友会」では学生に向けたセミナーなどを定期的に開催。「OB・OGからのアドバイスが役立った」という声も。「メンタイ」と呼ばれる「面接対策セミナー」では、企業在籍中の卒業生を講師として招き、2日間にわたり、ディスカッションや模擬面接、エントリーシートや履歴書の添削などを実施。約1400人の学生が参加する。有名大企業や官公庁を400社以上招く「企業・官公庁業務説明会」も開かれている。
公平かつ質実剛健を良しとしているため、大学側は原則として「縁故入社は禁止」と指導。おとなしくて覇気がないと思われがちな学生たちに、積極性とチャレンジ精神を持つことも教えている。
夏以降は4年生で就活に出遅れてしまった人向けの「就活リスタート講座」も開催され、内定が得られるまで手取り足取り対応してくれるそうだ。