嵐の二宮さんも使っている「現状維持バイアス」

横山 「横山語」ではないですね。この前、嵐の二宮和也さんが、東京ドームのコンサートで「現状維持バイアス」という言葉を使っていたようですから、グーグルで検索すればたくさん出てきます。そんな簡単な言葉ではないのですが。

寺田 そうですね。みんな「現状維持バイアス」をはずしたいと思っているのでしょうか?

横山 そうでしょうね。「変わりたい」「変わらなくちゃ」という表現ではなく、「現状維持バイアス」がはずれない、と言うと、コンサルティング先の社長や部長がめちゃめちゃ使いやすいみたいですね。部下から言い訳をされるたびに「おまえそれ、『現状維持バイアス』だろ!」と言うと、相手は何の反論もできないらしいです(笑)。

寺田 「現状維持バイアス」は、クライアントさんの現場では日常茶飯事に使われているのですか?

横山 ええ。「現状維持バイアス」と「ロックしますか?」が流行になりやすいですね。「『ロック』しろ」というのは、自分も「ロック」できない場合もあるので、少々キツイかもしれませんが、「現状維持バイアス」の表現はとても言いやすいと思います。

寺田 そうですね。「現状維持バイアスをはずす」という表現がいいんでしょうね。なんか、すぐはずれてしまうんだよという。

横山 そうですね。

寺田 「ロック」だとかなり厳しい感じですね。

横山 ええ、「ロック」は厳しいですね。

寺田 「ロック」と「現状維持バイアス」というのは、『部下本』でこれを強く出していくというのは決めていたんですか。

横山 いや、そうではないですね。「ロックPDCA」と言い始めたのは、本が出るちょっと前ですね。

寺田 なるほど。横山さんの場合、次から次へとアイデアが出てくる感じがするのですが、以前「メモ魔」とおっしゃっていました。メモを書いていくと、アイデアが次々スパークするものなのでしょうか。

「ツイスター型」vs「そよかぜ型」の対比はどこから?

横山 確かにそうですね。常に「メタファー」のことは考えています。「メタファー」とは、何かに喩えることです。先ほど話した、「脳の空白」を埋めてもらうために、万人が知っているような事例を用意することです。そのために、私が伝えたいことと、その事例とのいろいろな共通項を導き出していく作業をします。『部下本』でものすごく考えたメタファーは「ツイスター型」というコピー。もうこの表現はめちゃめちゃ考えました。

寺田 それは、どういうふうにして思いついたんですか?

横山 大量行動することで無駄が省かれていくことをどう表現するかと考え、2日間くらい考えました。そのときに、「遠心分離」というイメージが浮かんできて、これはいいと。遠心分離で風を起こしていくと、無駄な会議や資料づくりはどんどん吹っ飛んでいく。この「自然と吹っ飛んでいく」という感じを出したかったのです。

寺田 突然風が起こって、うお~んと。

横山 ええ。「竜巻」とか「突風」とか「トルネード」というのはよく使われるので、これはかぶっちゃいけないと思い、「ツイスター」というコピーを思いつきました。「ツイスター」というハリウッド映画があるのですが、これは、グアテマラにいるときに観た面白い映画です。

寺田 それは誰かが風を起こして組織改革するような映画なのですか?

横山 いえいえ、もう本当に竜巻が襲ってくる映画で、すさまじい映画です。もう恐怖を感じる映画で。

寺田 ただ、「ツイスター」という言葉は、あんまり使わないですよね。

横山 ですから、「ツイスター」でいいんだろうか?というのはすごく悩んだのですが、意外とクライアント先の方々から「うちもツイスターになります」と、言われることが多く、うれしいですよね。

寺田 そうですね。そして「ツイスター」の対向軸に「そよかぜ型」を持ってきた。『金持ち父さん、貧乏父さん』のように。「そよかぜ」という日本語4文字もいいですね。

横山 「そよかぜ」という表現は、それほどネガティブでもポジティブでもないですから、角は立たないですよね(笑)。メタファーを考えるとき、よく活用するのが『類語辞典』や『感情表現辞典』などの辞書です。家にたくさん持っているんですよ。たとえば、風とか水とか絵や写真つきで、ネット上などでも「雲の辞書」や「空の辞典」も、いろいろ活用しています。こういう辞書を駆使してイメージを膨らませていっています。