企業が不祥事を起こすたびに、ガバナンス改革の必要性が叫ばれ、社外役員の拡充が進んだ。およそ3週間にわたり公開予定の特集『社外取「欺瞞のバブル」9400人の全序列』の#22では、社外取締役と並んで重要な社外役員、「社外監査役」にスポットライトを当てる。彼らは報酬に見合う働きぶりをしているのか。今回は前編として、社外監査役の「上位3000人」推計報酬額ランキングでチェックしてみよう。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
経営者の専横防ぐ番人、社外監査役
報酬額トップ層の実名、キャリアは?
カルロス・ゴーン元会長の不正で経営が揺らいだ日産自動車、不正会計に手を染めた東芝、品質不正発覚を繰り返す三菱電機、原子力発電所が立地する町の元助役から3億円相当もの金品を幹部らが受け取っていた関西電力――。企業が不祥事を起こすたびに、これまでガバナンス改革の必要性が叫ばれてきた。
社外取締役や社外監査役といった社外役員の拡充を是とする流れは、国内でも強まってきている。その背景の一つに、経営者に対する監視を働かせることで彼らの専横を防ぎたいという発想があるのだ。
本特集では、これまで日本の社外取締役に注目して、社外取「全9400人」を徹底評価する複数の独自ランキングなどを作成してきた。今回と#24の2回にわたる記事では趣向を変えて、社外役員のもう一方の主役である社外監査役「全5600人」にスポットライトを当ててみたい。
取締役が企業の業務執行を担うのに対し、監査役は取締役の業務や会計に不正行為がないかどうかを独自に調査し、これを正すのを仕事としている。監査役は取締役に不正があれば、裁判所に差し止めを求める権限もある。当然、経営からの独立性が重視されており、その半数以上は社外監査役でなければならないのだ。
しかし、実際には不祥事を防げずに「監査役はお飾りだ」と批判されるケースは多い。例えば、冒頭で紹介した関電の役員20人による金品受領問題では、監査役が実態を把握しながら取締役会への報告を怠って放置したことが明らかになっている(ちなみに、この問題を受けて、経団連会長を務めた元東レ社長の榊原定征氏が関電の社外取に就任している)。
監査役が機能しないのは、内部登用者の問題もある。経理担当役員の「上がりポスト」になっていたり、取締役まで出世し切れず内部監査やコンプライアンス部門に流された人物がお情けで就いていたりすることが多い事情(=社長に人事権を握られていることが多く頭が上がらない)から、「経営サイドとなれ合いになりがち」(大手銀行幹部)との指摘は根強い。
経営危機に陥るような不祥事を防ぐためにも、社外監査役の役割は重要である。だが、その職務を本当に、きちんと果たせているのか。それを検証する一つの材料として、今回は社外監査役の「上位3000人」推計報酬額ランキングを提示したい。兼務社数も一緒に掲載した。
企業が支払っている多額の報酬額に、社外監査役が見合っているのか、次ページのランキングで確認してみよう。ランキングを見ると、トーマツ、あずさ、EY新日本、PwCあらたの四大監査法人出身の公認会計士や、西村あさひ法律事務所など五大法律事務所出身の弁護士といった士業が目立つほか、“ヤメ検”(元検事の弁護士)も登場する。