現代は、「課長」受難の時代だ。メンバーの価値観の多様化、働き方改革への対応などに加え、リモートワークへの対応という難問まで加わった。しかし、これを乗り越えれば、新たな「課長像」=「課長2.0」へと進化できる。そう主張する『課長2.0』がロングセラーとなっている。著者は、『社内プレゼンの資料作成術』などのベストセラーで知られる前田鎌利氏。管理職は「自分の力」ではなく、「メンバーの力」で結果を出すのが仕事。それはまるで「合気道」のようなもの。管理職自身は「力」を抜いて、メンバーに上手に「技」をかけて、彼らがうちに秘めている「力」を最大限に引き出す。そんなマネジメント手法について、ソフトバンク時代に管理職として目覚ましい成果を上げた経験を踏まえて書かれた内容に、SNSなどで「管理職として勇気づけられた」「すぐに実践できるヒントが詰まっている」と共感の声が寄せられている。本稿では、部下を伸ばし、社内的な評価の高い上司と、部下に嫌われ、社内評価も低い上司の「決定的な違い」について解説する。
管理職として「身軽」になるために、
やっておくべきこととは?
部下をいかにプロモーションするか?
これは、管理職にとって、非常に重要な仕事です。
メンバーの「自走力」を引き出し、チームが活性化させることができれば、管理職は、徐々に現場業務への介入から手を引くことができるようになります。
ここで大切なのは、自分の「後任候補」として育成してきたメンバーに、どんどん仕事を手渡していくことです。職制上の責任が管理職である自分にあるのは当然のことですが、実質的にいくつかのプロジェクトの管理を「後任候補」に任せて、自分は後方支援に回るわけです。
それは、「後任候補」に管理職としてのウォーミングアップをしてもらう意味があるとともに、自分自身が「身軽」になることにつながります。そして、自分は、より高い視点をもって、チームの将来を切り拓くことに注力していくのです。
ただし、これを実践するためには、そのメンバーが「後任候補」であるということが、本人はもとより周囲に認知されていなければなりません。
本人もその認識があるからこそ、業務上の責任が増えることを受け入れることができるわけですし、上司や上層部にその認識がなければ、部下に無責任に仕事を放り投げているように見えかねません。それでは、適切なチーム運営をすることは難しくなるでしょう。
そこで重要になるのが、部下のプロモーションです。
もちろん、「後任候補」のみならず、すべてのメンバーの実績や能力、可能性、努力などを社内に知らしめて、彼らのブランディングをする必要があります。そうすることがチームのブランディングにもつながりますし、メンバー一人ひとりのモチベーション・アップにもつながるのです。
部下プロモーションは、
「反復連打」が効果的である
やり方は簡単です。
チームとしてポジティブな評価が得られる局面で、それに貢献した担当者の名前をコツコツと伝え続けるのです。
例えば、上司にあるプロジェクトの実績が上がったことを報告するときには、必ず、担当者の名前を伝える。あるいは、上層部も同席する重要な会議で事業提案プレゼンをして「GOサイン」を得られたときには、「これは◯◯さんの企画です。最近、めきめき力をつけているんです」などとさりげなく付け加えるのです。
なかには、部下のやった仕事を「自分の手柄」のように吹聴する上司もいますが、それは社内的に自分の評価を下げる「最悪の下策」。“できる上司”は、そんなことは絶対にしません。「部下の手柄」をPRすることこそが、「自分の評価」を上げることだと理解しているのです。
ただし、部下PRは「さりげなく」というのが重要です。
あまりわざとらしくなると、白々しく聞こえるので逆効果です。むしろ、聞き流されるくらいでいいのです。それよりも重要なのは、ことあるごとに繰り返すことです。
そんな機会が積み重なることによって、上司などの心のなかに、自然とメンバーたちに対する高評価が刷り込まれていきます。「反復連打」が、部下プロモーションにはきわめて有効なのです。
(本稿は、『課長2.0』より一部を抜粋・編集したものです)