フォロワーが「監視者」に

――監視者ですか!

川野:はい。はじめはファンが応援してくれていると喜んで、よりフォロワーが増えるようにがんばってSNSに投稿を続けるのですが、次第に彼らの期待に応えようという意識が強くなって自由な発言、自然体の自己表現ができなくなってしまう。

 気づいたときには「応援してくれている」から、「監視されている」状態へと心理が変容していってしまうのです。

 つまり監視されている感覚とは、必ずしも自分のプライベートがのぞき見されている、という被害者的な感覚ではなくて、「みんなに期待されているから、なんとしてもそれに応えなきゃ」という心理に束縛されてしまうことなのです。

 周りからの期待に応えようとすることは、ある意味においては生きがい、やりがいになるでしょう。

 しかし、その意識があまりにも肥大してしまうとれっきとした「束縛」になっていって本当の自分の自然体を忘れてしまう。

 逆の観点でいえば、期待されていることをやらなければいけない、でもできない、というときに「自分の価値はない」と思い込んでしまう。

「期待されたことを完璧に演じる自分」こそが、「価値のある自分」だと錯覚してしまうところが怖いのです。

 SNSとの使い方をしっかりと割り切って、「本当の私はちがうけれど、SNSでは期待された役になりきって演技しているだけ」と思える人は大丈夫なのですが、心理的にSNSに依存するところが大きい人は、割り切ることができません。

 SNS上で否定されることが、自分の人間存在自体を否定されることと同義になってしまうのです。