解決策を提示しているのに
顧みられない人
世の中にはいろいろな偉い人のタイプと「聞く力」がある。その中で、実は内容をよく理解し、解決策を一生懸命に考えていながら、相手に示す共感性が低いがゆえに、「人の言うことをよく聞かず独善的」という風評を得てしまう人がいる。
こういう人は概して頭の回転が速く、一を聞いて十を知るようなところがあり、話を聞いてもらいたい人が本当は隠したいこと、直視したくないことまで見抜いて、遠慮なくそれを指摘する。なぜなら相談者本人が無意識では気づいている「不都合な真実」にこそボトルネックがあり、それをクリアにし、そこから解きほぐしていかなければ、当人が抱えている問題は解決しないからだ。相談された人への厳しい指摘は、最短距離の問題解決という観点ではきわめて正しい行為である。
しかしながら、聞いてもらっている方からすれば、正しければいいというものでもないだろう。共感力というクッションがなく、耳の痛いことをダイレクトに言われると傷つく。そして「あの人は人の話をろくに聞かず、一方的に自分の論をまくしたてるだけだ」と拒絶してしまうのである。
一方で、話を聞いている姿勢がよく、上手に共感を示している(ふりをしている)だけで、本当は中身のことは何も理解せず、解決策もできていないのに、立派な人と呼ばれているような人もいる。
もちろん、共感や、気持ちに寄り添うといった態度はとても重要だから、それを軽んずるつもりはないが、こと社会的に地位の高い人に関して評価するならば(共感も大事だが)、理解と実行の両方がより大事であろう。リーダーに求める「聞く力」を狭く定義してはいけない。その点、我が国の総理は単に共感するだけでなく、大事なことを理解し、解決するところまでやってくれる、真に「聞く力」がある人なのだろうと強く信じている。
(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)