金融DX大戦#11Photo by Yoshihisa Wada

ふくおかフィナンシャルグループ傘下のみんなの銀行は、アクセンチュアの支援を受けて昨年5月に開業した国内初のデジタルバンクだ。特集『金融DX大戦』(全22回)の#11は永吉健一頭取にインタビューし、「首を覚悟」して開業にこぎ着けた経緯やアクセンチュアと組んだ理由、さらにはエンジニアの内製化を進める狙いについて語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

デジタルネーティブ世代を大量獲得も
預金残高の伸び悩みで見えてきた課題

――みんなの銀行は今年3月時点で88万ダウンロードに達し、33万口座が開設されました。昨年5月のサービス開始時点に狙った通りの成果だったのでしょうか。

 ほぼ狙い通りのところはできたかなと思っています。

 よく「インターネット銀行と何が違うの?」と聞かれるのですが、われわれからすれば、実はネット銀行は既存の銀行に近い。店舗はないけれど、商品や業務の仕組み、システムは普通の銀行とほとんど変わらない。

 インターネットが普及し、2000年以降に銀行はDX(デジタルトランスフォーメーション)の先駆けのような形で業務を効率化し、パソコン上で完結するインターネットバンキングをつくり上げた。ネット銀行は、さらに効率化するために店舗を持たない戦略に打って出たわけですが、店舗がない以外は既存の銀行とほとんど変わらない。

 ではデジタルバンクであるみんなの銀行とは一体何か。銀行起点ではなく、あくまでデジタル起点なのです。デジタルを起点に銀行の機能やサービスを付加し、しがらみがないというところも含めて逆転の発想でつくったのがデジタルバンクです。

 口座を開設するプロセス一つを見ても、例えば通帳を発行するとか、カードを郵送するとか、ネット銀行でも業務の中に織り込まれていますが、われわれはデジタルを起点にしているので通帳もカードもない。まさにデジタルネーティブの人たちに刺さるポイントをつくれたことが、ユーザーが増えた背景にあると思っています。

――一方で課題も見えてきたのではないでしょうか。

 預金残高が当初の計画を下回りました。

 その理由の一つは、やはり日本には、アンバンクト(口座を保有していない)な人がほとんどいない。われわれのような最後発の銀行ができたとき、新たに口座を開設する動機って、よっぽどのことがない限りないわけです。

「ポケモンGO」みたいに、ぽっと出て何億ダウンロードとかのアプリもありますが、当然、そこまでブレークもしていない。認知してもらい、使ってもらって「いいね」と思ってもらえるところまで一定の時間がかかる。

 そこは課題としてはありますが、この1年間でうまくいったこと、思うようにいかなかったことの実績はかなり蓄積できた。うまくいかなかったことを次にする必要はないし、うまくいったことをさらに進化させていく取り組みができると思っています。

 国内初のデジタルバンク「みんなの銀行」は、今年5月にサービス開始1年を迎えた。永吉健一氏が「狙い通り」というのは口座開設者の数だけではない。その7割が10~30代のデジタルネーティブ世代であり、親会社であるふくおかフィナンシャルグループ(FG)の地元・福岡だけでなく、全国から満遍なくユーザーを獲得した。

 だが、ある地方銀行幹部は「収益化は難しいのではないか」とみる。実際、預金残高は59億円と当初の計画を下回った。開業から3年以内に黒字化しなければならない銀行法の壁を突破するために、永吉氏はどのような策を打とうとしているのか。

 そもそも地銀の中で「勝ち組」といえるふくおかFGはなぜ、デジタルバンク開業という未知の領域に足を踏み入れたのか。そしてなぜ、そのパートナーにアクセンチュアを選んだのか。永吉氏が、その全てを明かした。