壁を超えたら人生で一番幸せな20年が待っていると説く『80歳の壁』が話題になっている今、ぜひ参考にしたいのが、元会社員で『島耕作』シリーズや『黄昏流星群』など数々のヒット作で悲喜こもごもの人生模様を描いてきた漫画家・弘兼憲史氏の著書『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)だ。弘兼氏のさまざまな経験・知見をもとに、死ぬまで上機嫌に人生を謳歌するコツを説いている。現役世代も、いずれ訪れる70代、80代を見据えて生きることは有益だ。コロナ禍で「いつ死んでもおかしくない」という状況を目の当たりにして、どのように「今を生きる」かは、世代を問わず、誰にとっても大事な課題なのだ。人生には悩みもあれば、不満もあるが、それでも人生を楽しむには“考え方のコツ”が要る。『死ぬまで上機嫌。』には、そのヒントが満載だ。
※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』より一部を抜粋・編集したものです。
友人は多いほうが幸せという偏見
あなたは友人が多いほうですか、少ないほうですか。また、友人との交友に満足しているでしょうか。今はフェイスブックやLINE(ライン)といったインターネット上のSNS(交流サイト)が充実しています。たくさんの人とつながって充実感を覚える人がいる反面、不特定多数の人とつながることに疲れている人もいるようです。
こういう交友関係をめぐる悩みは、今に始まったことではありません。僕がアラフォー世代だった1980年代には「ネクラ」という言葉が流行り、交友関係の狭い人間はバカにされる風潮がありました。若者は「ネクラ」と呼ばれたくない一心から、必死にスケジュール帳を埋めて、何かにつけて友人とつるんでは騒ぎあっていました。
僕自身は、そんな風潮からは距離をおいていましたが、当時「友だちが多い」ことをアピールしていた若者の中にも、無理をして疲れた人がいたはずです。「友人が多いほうが幸せであり、豊かな人生である」「友人が少ない人は人間的な魅力に乏しく、性格に問題がある」そういった言説は、突き詰めていけば、ただの偏見です。
適当な友人の数は年齢によって違う
人間には性格や年齢に応じて適当な友人の数というのがあります。だから、自分にとって無理のない範囲で友人とつき合っていくのが原則です。
基本的に、人間関係はギブ・アンド・テイクで成立します。友人に借りを作ったら、自分も何かを返さなければバランスが保たれません。例えば、誕生日にプレゼントをもらったら、相手の誕生日にお返しをするのがマナーでしょう。毎回同じものを贈って芸がないと思われるのもしゃくですから、気の利いたプレゼントをしようとすると、それなりの労力が求められます。
孫の結婚式にお祝いをいただいたときにも、お返しをしないわけにはいきません。お互いの孫を見たことがなくても、つき合いでそんなやりとりをするケースはよくあります。
そんな友人が20~30人もいたら、単純に考えて、毎月2回以上はそんな面倒を負うことになります。
欧米に比べて日本の高齢者は友人が少なめ
人生の下り坂を歩んでいる70代に、こういう交際は本当に必要なのでしょうか? 友人が多いと金銭的な負担も増します。交友関係を維持するために預貯金を取り崩していたら、ストレスが増すだけです。
僕は、友人関係は減らし、気の合う仲間とだけつき合えばいいと思っています。一方で、友人がまったくいないというのは問題です。内閣府の高齢社会白書(2016年版)では、「家族以外の人で相談し合ったり、世話をし合ったりする親しい友人がいるか」という質問に対して、「いずれもいない」と答えた高齢者の割合は25.9%。ドイツ17.1%、アメリカ11.9%、スウェーデン8.9%などと比較して高い数字となっています。
70代に十分な友人の数とは?
東北大学などが行った日英共同研究によると、日本人男性は特に友人と会わない人が多く、これが生存期間を短くしているとのデータが報告されています。孤独はストレスとなり、寿命にも影響を与えるのです。
僕自身は毎日友人に囲まれてワイワイ過ごしたいとは思わず、本当に仲のよい友人と末永くつき合っていきたいと考えています。あえてここで基準を示すなら、友人は多くても5人もいればいいというのが僕の持論です。
※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。