安倍氏死去で「企業倒産」の懸念が高まる理由、アベノミクス終焉リスクに焦点2022年3月にダイヤモンド編集部のインタビューに応じた安倍元首相 Photo by Yoko Akiyoshi

安倍氏死去が経済に与える影響とは

 2022年7月8日、奈良県で街頭演説していた安倍晋三元首相が銃撃され死去した。実に衝撃的な事件であるものの、大手メディアは「テロ」や「暗殺」といった言葉は使っていない。特定の宗教団体への恨みが銃撃につながったのか、現時点では動機の全容はわからないが、明らかな暴力であり、どのような論理をもってしても許されない。元首相だった人物が“暗殺”された事実は、これからの日本社会に大きな変化をもたらすだろう。

 それは、人々の安全意識や社会文化が変わるという意味だ。誰もが銃器を持っているかもしれない、と想像する社会としない社会とでは大きな違いがある。不特定多数の人々の前に出る人物は、襲われる可能性を意識せねばならなくなる。

 筆者が安倍氏に関する第一報を聞いたのは、仕事関係者と打ち合わせをしていた時だった。その場にいた全員が言葉を失い、数秒間は沈黙し、頭の整理ができなかった。しばらくたって誰かがため息をついた後、「これで経済政策も変わっていくのかな」とつぶやいた。

 報道を受けて株式・金融市場は即座に反応した。8日の株式市場は午前から200円ほど下落し、為替は136円から135円台に、少しではあるものの円高に振れた。これは不安定な動きであり、今後のトレンドにつながるかはわからない。※編集部注:11日は一時137円台に、24年ぶりの円安水準

 大物政治家を一人失っても、優れた政策は継続して実施されるだろうし、「日本のファンダメンタルに影響はない」とクールに考えてもよいだろう。

 一方で最近とても気がかりなことがある。筆者は仕事柄、取引先・調達先の倒産を事前察知するための講義や教材を販売しているのだが、このところ顧客の関心が高い。取引先・調達先がこれまで通りの企業活動を続けるのが難しいのではないかという危機感が、現場レベルまで広がっているためだ。

 次ページ以降はあくまで筆者の仮説であるが、安倍氏死去による経済への影響、とりわけ企業倒産や中小零細企業が抱える問題を考えてみたい。