ビジネスパーソンの悩みの多くは人間関係に由来するものではないだろうか。現在、この問題をはじめ、仕事にまつわる多くの悩みを圧倒的な説得力をもって解決することで人気なのが、プロデューサー・佐久間宣行さん初のビジネス書『佐久間宣行のずるい仕事術』だ。この本はSNSで「働くすべての人に読んでほしい」「人生の教科書にします」と絶賛コメントが多数寄せられている。ここでは本書から佐久間氏が提唱する仕事術の一部をお届けする。

【実話】<br />仕事が退屈で腐っていた男が、<br />入社10年目に見たとんでもない奇跡の話Photo: Adobe Stock

「飽き」を放置してはいけない

「仕事が退屈」

「つまらない」

これは自分が行動することでしか解決できない。

退屈なんて時間が経っても消えることはないし、なにもしなければ深まるだけだ。

それなのにもし、あなたがモヤモヤとした「飽き」を放置しているなら、それは「自分が変化を起こせること」を信じていないからかもしれない。

一夜にして奇跡は起こる

ものすごいラッキーが起きたり、一夜にして状況が変わること。

そんな奇跡は案外、起こる。

たとえばこんなふうに。

「打ち切り」と戦う毎日

僕らの仕事は企画が通り、死に物狂いでプロジェクトを立ち上げても、会社から「見込みなし」と判断されればすぐ打ち切られる。

組織は「経費削減」「損切り」を、常に狙っているからだ。

だから企画は立ち上げるより、続けるほうがむずかしい。

そこで大切になるのが、会社や上司と「KPIを握ること」だが、テレビ局の場合、基本となるKPIは「視聴率」。

でも、僕がつくるような番組は、そこで勝負できるものではなかったから、毎回、新たなKPIを会社に提案することが必要だった。

子ども向け番組「ピラメキーノ」

この番組は、大人向けの番組ほど視聴率が取れないことがわかっていたから、別のKPIが必要だった。

視聴率だけで判断されたら間違いなく「失敗」で、すぐ終わってしまう。

そこで会社と握ったKPIが、「子どもたちに流行る『ギャグ』か『歌』を生み出す」ことと「イベントで子どもたちを大動員する」ことだった。

両方ともテレビ東京が経験したことのない「成功」だから、インパクトが残せる。

会社にもこれで納得してもらった。

2009年4月、番組スタート

そんなKPIを引っさげて、2009年4月に番組はスタートした。

はじめはまったく手応えがなかったのだが、3カ月目くらいで「ピラメキたいそう」が学校で流行りはじめた。

「よし、いける」。

番組はクールの変わり月の2カ月ほど前に、継続か終了かが判断されることが多い。

4月スタートの番組は8月に判断が下されるというわけだ。

そこで僕は忘れもしない7月27日、この夏休みに勝負をかけた。

よみうりランドの7000人(!)が収容できる会場をおさえ、そこから生放送することを決めたのだ。

ここを満員にできたら、それを見たスポンサーが引き続き応援してくれるかもしれない。

そう信じて通常回の番組予算は1本数百万円にも満たないのに、イベントには2000万円近くをかけてその日に臨んだ。

絶望の当日

当日。

僕の思惑をあざ笑うかのように、天気は土砂降りの雨

絶望的な空気が漂い、スタッフはみんな地獄みたいな顔をしていた。

「台本がびしょ濡れです」
「カメラが壊れはじめました」

ダメだ、やるだけやったけど勝負に負けた。
番組終わっちゃうな。

そう思いかけたとき、雨に濡れながら制作会社のプロデューサーが駆け込んできた。

「今日イベントやりますよね!? 駅から何千人とすごい行列が続いています」

その言葉を聞いて、僕は走って会場の外に向かった。

目の前に広がる奇跡

目に映る光景を見て驚いた。

傘をさしたり雨合羽を着たりした、色とりどりのファミリーが会場を目がけ、集まって来てくれている。

その列は駅から会場まで続いている。
すごい人数だ。

ウソだろ。

鳥肌が立った。

こうして生放送はものすごい熱気とともにスタートした。

子どもたちが土砂降りの中、ピラメキたいそうを踊っている。

イベント終盤には雨が止み、奇跡のような虹が出た。

この「7000人の絵」を見せられたことで、番組の継続が決まった。

僕らは勝負に勝ったのだ。

キツさの先にしかおもしろい仕事はない

変化を起こす挑戦はなかなか認められない。

既存の指標で評価することが困難だからだ。

だから新しい指標を見せるためには、あえてレベルの高い目標に挑まないといけない。

それはキツイことだし失敗する確率も高い。

けれどその先にしか本当におもしろい仕事はない。

まずは「沼」から抜け出そう

仕事のモヤモヤは沼のようなもの。

沼にハマったら濁った水に浸かりながら息をする方法を見つけるか、なんとか足がかりを探して陸に上がるしかない。

それぞれのスタンスに優劣があるわけではないけれど、まずは「沼から脱出する」

そこを信じることからはじめよう。

一歩を踏み出す

変化とは「起きる」ものではなく「起こす」もの。

小さな一歩でかまわない。

まずは前に踏み出せば、奇跡が待っていることがある。

そんな心震える大きな奇跡をあなたも体験してほしい。

『佐久間宣行のずるい仕事術』より)

本書には、この他にも、たくさんの仕事術が収録されています)