脳には8つの基地がある―「脳番地」でわかる基本的な仕組み

 まず、基本的な脳の仕組みについて、説明しましょう。人間の脳の働きは、「脳番地」という考え方で理解できると私は考えています。脳には1000億個以上の神経細胞がありますが、同じような機能を持つ細胞同士が集まって「基地」を作っています。私は、この「基地」の機能ごとに、住居表示のように番地を振りました。脳番地は、脳全体でおよそ120あり、右脳と左脳にそれぞれ60ずつ分かれています。つまり、脳には少なくとも120もの働きの違いがあるということです。

 一般の方が理解しやすいよう整理し、機能別に脳番地を大きく8つの系統に分けたのが次の分類です。

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思考系脳番地=何かを考えたり判断することに関わる

感情系脳番地=感性や社会性、喜怒哀楽を感じ、感情を生み出すことに関わる。脳の複数の部位に位置し、運動系の背後に接している感覚系脳番地は皮膚感覚を通じて感情が活性化する

伝達系脳番地=話したり伝えるコミュニケーションをとることに関わる

運動系脳番地=手足や口など、体を動かすこと全般に関わる。手、足、口、目の動きを司る脳番地は運動系の中で別々に分かれている。手足は、脳の対側が支配しているのに対して、口や顔の動きは、片側の脳から両側の動きを司る両側支配になっている。

聴覚系脳番地=耳で聴いた言葉や、音の聴覚情報を脳に取り入れることに関わる

視覚系脳番地=目で見た映像、読んだ文章など視覚情報を脳に取り入れることに関わる

理解系脳番地=目や耳から入ってきたさまざまな情報や言葉、物事を理解、解釈することに関わる

記憶系脳番地=覚えたり思い出すことに関わる

同じ細胞だけど、役割が違う「右脳と左脳」

 人間の脳も、目や耳、そして手足のように見た目は左右対称です。また右脳にも左脳にも、同じ機能を持つ脳細胞が、同じように存在しています。実際に「思考系」「感情系」「伝達系」「運動系」「聴覚系」「視覚系」「理解系」「記憶系」の8つの脳番地は、左右の脳にほぼ均等にまたがっています。でも、実は私たちの脳は「右脳」と「左脳」で役割分担をしています

 たとえば、同じ「感情系脳番地」でも、左脳では自分の感情や意思を作り出し、右脳は自分以外の人の感情を読み取る働きをしています。また、左脳の「視覚系脳番地」では文字や文章などを読み取り、右脳では絵や写真、映像などを処理します

 さまざまな研究の結果、左脳は主に言語情報の処理に関わっていること、そして右脳は非言語である画像や空間の認識を担当しているということも明らかになっています。こうして、右脳と左脳は異なる働きを担っていますが、左右対称に同じ働きをする脳番地もあります。それが「運動系脳番地」です。

 右利きの人は左脳の運動系脳番地が、左利きの人は右脳の運動系脳番地が発達しています。なぜなら、右脳から出た命令は左半身の筋肉を動かし、左脳は右半身の動きをコントロールしているからです。その一方で、人は左手を使うことで右脳を、そして右手を動かすことで左脳を刺激しています。つまり、左手をよく使うと右脳が活性化し、右手を主に動かせば左脳が発達するのです。