書店で一番売れているETF本の最新版『改訂新版 ETFはこの7本を買いなさい』(朝倉智也著)が、2月16日に発売。投資先進国米国で、ほぼ毎年のように2桁成長を続けている注目の金融商品ETF(上場投資信託)。現在の純資産残高は約683兆円。一方、日本のETFの市場規模は2021年4月末で約60兆円。しかし、日本でもETFを投資の選択肢に入れる人が着実に増えている。特に注目度が高まっているのが海外ETFだ。(1)低コスト、(2)機動的な取引ができる、(3)分配金を受け取りながら運用できる、(4)究極の分散投資ができる、など多くのメリットがあるETF。本連載では、長期投資やETFに興味がある人に向けて、そもそもETFとは何か、その賢い選び方・買い方、資産運用としてのETFとの付き合い方などについて、同書から一部を抜粋して公開する。
1万ドルの場合のポートフォリオは、これ!
では、先にご紹介した厳選7本のETFで組むポートフォリオを使い、実際に「どのくらいの金額でポートフォリオを作ればよいか」を考えてみましょう。
ETFは、原則として1銘柄売買するごとに手数料がかかります。ですから、1銘柄ごとにまとまった額を投資するほうが、売買手数料が投資額に占める割合は小さくなるわけです。
実際に運用する際は、売買手数料率がどれくらいかかるのかを確認する必要があります。また、その際は為替手数料についても考慮しておきたいところです。
以下、2021年5月28日時点の株価を使い、SBI証券の売買手数料(海外ETFは約定代金の0.486%、上限手数料22ドル)を使って試算していきましょう。
【下図表】は、1万ドル(約110万円)を運用する場合で手数料を試算した表です。
(1)積極的なポートフォリオ例(1本)
(1)は、株式100%の積極的なポートフォリオで「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF」(VT)1本だけで運用するケースです。
株価が102.91ドルなので、1万ドルで買えるのは97株、投資金額の合計は9982ドルとなりますね。VTについては、買付手数料は無料です。
為替手数料は、住信SBIネット銀行で米ドルから円に換える場合4ドルとなります。
このとき、手数料は合計4ドルなので「手数料率=(買付手数料+為替手数料)÷投資金額の合計)=0.04%」と計算できます【上図表の上段】。
(2)積極的なポートフォリオ例(3本の組み合わせ)
では、(2)株式100%の積極的なポートフォリオを、厳選ETF銘柄の3本で組んだ場合はどうでしょうか?
モデルポートフォリオの構成比にできるだけ近くなるように各銘柄を購入すると、
2 バンガード・トータル・ストック・マーケットETF……約4000ドル
3 バンガード・FTSE先進国市場(除く米国)ETF……約3000ドル
4 バンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF……約3000ドル
となります。
具体的に各銘柄の株価から株数を決め、合計金額とそれに対する買付手数料と為替手数料を計算すると、
2 バンガード・トータル・ストック・マーケットETF……3925ドル、買付手数料無料、為替手数料1.57ドル
3 バンガード・FTSE先進国市場(除く米国)ETF……2935ドル、買付手数料14.5ドル、為替手数料1.17ドル
4 バンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF……2963ドル、買付手数料14.5ドル、為替手数料1.18ドル
です。手数料は合計32.92ドル、手数料込みの合計金額は9854ドルとなり、手数料率を計算すると0.33%となります【上図表の中段】。
(3)スタンダードなポートフォリオ例(4本の組み合わせ)
次は(3)株式6割、債券4割のスタンダードなポートフォリオを、株式については「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF」1本で、債券については厳選ETF7本のうち3本を使って組んだ場合を見てみましょう。
モデルポートフォリオの構成比に近くなるように各銘柄を購入すると、手数料は合計23・12ドル、手数料込みの合計金額は9870ドル、となり、手数料率は0・21%となります【上図表の下段】。
モーニングスター株式会社 代表取締役社長
1966年生まれ。1989年慶應義塾大学文学部卒。銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事した後、95年米国イリノイ大学経営学修士号取得(MBA)。同年、ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資金運用全般、子会社の設立、および上場準備を担当。98年モーニングスター株式会社設立に参画し、2004年より現職。第三者投信評価機関の代表として、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努める。
主な著書に、『改訂新版 ETFはこの7本を買いなさい』『全面改訂 投資信託選びでいちばん知りたいこと』『つみたてNISAはこの7本を買いなさい』『一生モノのファイナンス入門』(以上、ダイヤモンド社)、『iDeCoで自分年金をつくる』(祥伝社新書)、『お金の未来年表』(SB新書)などがある。