連日の猛暑で体調を崩しがちな人も多いのではないだろうか。コロナ禍の生活が長く続き、気づかないうちにストレスをためこみやすい。「何もしないのに疲れている」「仕事や人間関係にしんどさを感じる」という人におすすめなのが、2022年8月3日発売の『こころの葛藤はすべて私の味方だ。だ。著者の精神科医のチョン・ドオン氏は精神科、神経科、睡眠医学の専門医として各種メディアで韓国の名医に選ばれている。本書「カウンセリングや癒しの効果がある」「心に平和をもたらす本」「心のしくみを知りたい人にとてもおすすめ」などの感想が多数寄せられている。本書の原著である『フロイトの椅子』少女時代のソヒョン氏も愛読しているベストセラー。ソヒョン氏は「難しすぎないので、いつもそばに置いて読みながら心をコントロールしています」と推薦の言葉を寄せている。自己啓発書では物足りなくなった読者に、隠された自分の本心を探り、心の傷を癒すヒントをくれる1冊。今回は日本版の刊行を記念して、本書から特別に一部抜粋・編集して紹介する。

【精神科医が教える】「空回り状態」から抜け出すたった1つの方法Photo: Adobe Stock

挫折感を強く感じる理由とは?

人生にはジャンプ台もありますが、障害物も少なくありません。
目標に向かって歩いている途中で障害物につまずいて転び、ひざから血が流れることもあります。
このとき味わう気分が挫折感です。

叶えたかったことが大きければ大きいほど、挫折感は深まります。
強い挫折感にさいなまれたときは、障害物が大きいのではなく、叶えたい気持ちがとても切実だったからだと考えてみてください。
無意識の中をのぞいてみるというのは、こういうことです。

挫折した人は心配性になり、エネルギーを浪費してしまいます。
前にもうしろにも進めず空回りするせいで、いっそう気力が失せていきます。

挫折感は、自分にとっても家族や周辺の人々にとっても、時限爆弾のように危険です。うまくなだめなければ、いつ爆発するかわかりません。

「これは運命なんだ」という合理化

思うような人生を歩めないとき、自分をなぐさめるもっとも簡単な方法は、「運命」のせいにすることです。
「これは運命だ」と考えれば、気がラクになるかもしれません。

ただしなんの意味もありません。「合理化」という防衛機制を使っただけです。

精神分析学において、性格、防衛機制、対処方法、これらはすべて「運命」に該当します。

生まれ持ったものだと考えている運命は、実は幼いころの経験がきっかけでつくられており、成長とともに定着していきます。

このパターンを無意識的に繰り返し、結果を運命だと考えるようになるのです。
そのため、「これが私の運命なんだ」という嘆きは、いつまでも繰り返されます。

運命として受け入れれば責任を負う必要がないので、しばらくの間は心がラクになります。
でも、その運命を受け入れられないときは、どうすればいいのでしょうか?

「小さなこと」が運命を変える

運命を変えたいですか?
それなら、自分の中で無意識的に繰り返される性格パターンを知り、いつものパターンを変えていきましょう。

挫折感に打ちひしがれて部屋に閉じこもっているのではなく、動いてみましょう。
そうすれば、さえぎられた気持ちが再び流れ始めます。

とりあえず、歯ブラシを持って歯みがきでもしながら動いてみると、空回りから抜け出すことができます。
ゴム風船から空気を抜くのは、大きなハンマーではなく、とても小さな針の先です。
小さなことから始めていけばいいのです。

挫折は必ずしも悪いことではありません。
人生で体験する適切なレベルの挫折は、自我の力をじょうぶに育てるために大きく役立ちます。

もちろん、あまりにも大きな挫折を同時にいくつも経験したら、立ち直れなくなる恐れもあります。

そこで、免疫をつける予防接種のように、挫折を賢明に経験していくのです。
賢明というのは、日々の中で体験する出来事に一喜一憂しすぎないということです。

いいことが起こればラッキー、悪いことは予防接種だったと考えてください。
いい換えると、これこそがまさにポジティブシンキングです。

(本原稿は、チョン・ドオン著 藤田麗子訳『こころの葛藤はすべて自分の味方だ。 「本当の自分」を見つけて癒すフロイトの教え』から一部抜粋・改変したものです)