糖質制限ダイエットが定着した昨今、健康リスクが高い主食は、果たして米か小麦か。
岐阜大学の研究グループは、1992年にスタートした岐阜県高山市の集団研究「高山スタディ」のデータを使い、当時登録した35歳以上の地域住民から心血管疾患の既往がない2万9079人(男性45.9%)を選び、米飯食、パン食、および麺類と心血管疾患との関連を調べている。
米の摂取量順に4群に分けると、男性で最も米を食べる量が少ない群は、ほかの3群よりも糖尿病と高血圧が多く、運動量が少なく、アルコールと塩分、食物繊維の摂取量が多い傾向があった。米を食べる量が少ない女性は、学歴が高く、アルコールとコーヒーの摂取量が多かった。こちらも塩分と食物繊維の摂取量が多い。
男女共通の傾向として、米をよく食べる人は、大豆製品とわかめなどの海藻も食べる一方、肉や卵の摂取量は少なかった。逆にパン食派は肉や卵の摂取量が増え、大豆製品が減っている。麺類好きは芋類、肉・魚介類、卵の摂取量が増える傾向がみられた。
2008年までの追跡期間(平均14.1年)中に、1685人(男性46.2%)が心血管疾患で死亡。男性で米の最少摂取群の死亡リスクを1とすると、2番目に少ない群は0.98、3番目の群は0.80、最も米好きな群は0.78と、米を食べる量が増えるほど心血管疾患死リスクが低下した。
パン食との関係は認められず、麺類では年齢の影響が大きいようだ。中高年男性は「ラーメン大盛り」を控えた方がよさそうである。
一方、女性は米飯食、パン食、麺類のいずれでも、摂取量と心血管疾患死との関係は認められていない。女性は米の摂取量が増えるとお菓子も増えるため、米飯食のメリットが相殺されるようだ。
糖質制限のメリットは、元々難治性てんかんや糖尿病患者に対する効果が注目されたもので、ほかの疾患への影響は明らかではない。
中国と日本に限れば、米飯食は虚血性心疾患死を減らすという報告もある。健康な人は小難しく考えず、バランスよく「おかず」を楽しめる主食を選ぼう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)