「人前で話すのが苦手」「プレゼンで緊張してしまう」「雑談も苦手」
そんなアナタが参考にしたいのが、TBSの井上貴博アナウンサーの著書
『伝わるチカラ』(ダイヤモンド社)だ。アナウンサー歴15年で試行錯誤しながら実践してきた52のことを初公開。「地味で華がない」ことを自認する井上アナが、情報・報道番組の最前線で培ってきた「伝わらない」が「伝わる」に変わるテクニックが満載。人前で話すコツ、会話が盛り上がるテクなど、仕事のプレゼンからプライベートの雑談まで即役立つノウハウ、さらに失敗や葛藤についても赤裸々に語る。
※本稿は、
『伝わるチカラ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

お笑い芸人に「資料の見せ方」を学ぶ“意外な着眼点”

資料は文字よりも
写真やイラストを重視する

いまは、プレゼンや商談などで、「パワーポイント」のスライドを活用するのが当たり前になっています。テレビでも、フリップを使って情報を伝えるスタイルがすっかり定着しています。私がフリップを作成するスタッフに伝えているのは、極力、文字を使わないことです。

テレビである以上、ビジュアル効果を最大限活用したいので、なるべく文字よりも写真やイラストで見せることを重視しています。ただ、フリップはアナウンサーにとって、あくまでもカンペでしかありません。

フリップが充実していても、アナウンサーの伝え方が拙ければ意味がないということです。別の言い方をすれば、情報の伝え方を決定づけるのは、アナウンサーの話術なのです。だから、私はフリップの細かな仕様をスタッフに一任しています。

資料を見せるタイミング一つで
受ける印象が変わる

プレゼンでも、スライドに力を入れることは重要ですが、そこに依存しすぎると本末転倒になるので要注意です。

なお、フリップは内容だけでなく、「見せ方」にも工夫の余地があります。他局ですが『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)という、芸人さんが大喜利をして、勝者を決めるバラエティ番組があります。

この番組では、芸人さんがフリップに手書きした回答を披露するシーンが多出するのですが、よく見ていると、芸人さんによって間のとり方や見せ方に違いがあることに気づきます。

特に印象的なのは、バカリズムさんです。バカリズムさんは、自分で書いた文字を読み上げ(その間、視聴者にはフリップの裏側を見せ続け)、最後のタイミングでフリップをひっくり返して、手書きのイラストや文字情報を視聴者に提示します。フリップの持ち方や角度も独特であり、一連の所作がバカリズムさんの面白さを形成しているように見えるのです。

テレビのコメンテーターに
資料の見せ方を学ぶ

別の例を挙げると、みのもんたさんは大きなボードの隠された部分をめくっていきながら情報を伝える“めくり”の手法を得意としていました。みのさんは、めくりのタイミングで視聴者の期待感を高めたり、めくったように見せかけてフェイントでめくらないなど、ありとあらゆる工夫をしていました。

そう考えると、ビジネスパーソンの資料の見せ方にも、工夫の余地がありそうです。テレビのコメンテーターには、戦略的にペンを片手にコメントする人がいますが、ペンを使って資料を指すか、指を使って指すか、ペンを使うにしても、高級ボールペンか数百円のボールペンかで、印象は大きく異なります。

そこは、自分がどう見せたいかによって違うので、唯一の正解があるわけではありません。会社の会議であれば、安いボールペンで親近感を演出し、ちょっと高級さが求められる場であれば、モンブランの高級ペンを使うなど、演出法は違ってくるでしょう。

いずれにしても、情報は見せ方次第で、受け手側の印象が大きく変わります。そんな視点でテレビを見ると、参考になることがあるのです。

※本稿は、『伝わるチカラ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。ぜひチェックしてみてください!