褒められてばかりの子どもは間違いを正さなくなる
――家庭で怒られず、叱られず、褒められてばかりの子どもには何か特徴がありますか?
富永:自分の間違いを認めることができません。たとえば算数で、「式を書かないから間違えるんだよ」と注意しても、自分がやっていることを否定されたことがないから、否定自体を受け入れられないのです。間違っていても自分のやり方を変えようとしない傾向があります。
――それは、指導する側にとっては厳しい状況ですね。
富永:これはおそらく勉強に限らず、スポーツなどの習い事でも、教えるほうは難しさを感じてるんじゃないかと思います。そういう子どもが、そのまま社会に出ていくと、本人も受け入れるほうもキツいですよね。
子育ての問題を親が一人で抱え込まない
富永:親が叱ることができないならば、信頼できる学校や塾の先生から代わりに叱ってもらうなどして、第三者と連携した子育てを意識したほうがいいのです。
――一方で、子どもを叱り過ぎてばかりで、アンガーマネジメントを学ぶ親も多いと教育関係者から聞いたことがあります。富永さんも本書で、親の叱り方についてもアドバイスされていますね。
富永:どんな人でも、つい感情的になってしまうことはあると思います。衝動的に怒ったり叱ったりしたあとは、本人が納得するまで丁寧に説明しないといけません。
僕はよく塾生の保護者に、「子どもを説得したいときは、100%の感情か、100%のロジックで向き合ってください」という話をしています。もちろん、暴言、暴力、人格否定や虐待は絶対ダメですよ。
たとえば100%の感情というのは、親が会社を休むぐらい覚悟を持って子どもと向き合うとか、学校で何か重大なトラブルを起こしたら泣いてでも謝りに行くとか、そういったことです。
100%ロジックで説得するなら、「なぜやってはいけないのか」「なぜダメなのか」を、文章で解説するくらいのつもりで話して、本人が納得できるまで時間をかけて話し合わなければいけません。
――叱り方が下手な親は、その2つができていないということでしょうか?
富永:塾が多い駅近くのカフェにいると、子どもに塾の教材をやらせて、できないとヒステリックになっている親をよく見かけます。
たまに会話が耳に入ってくると、自分に自信があって自分がすべて正しいと思い込んでいるんだな、と感じることが多いです。もしくは、場違いなところで感情的になってしまうほど、自分を客観視できなくなって追い込まれているのかもしれません。
そういう親は、他人の力を借りたり他人に頼ったりすることが苦手で、全部1人で抱え込んで子どもも自分も追い込んでしまう傾向があるので、中学受験には向いていないのかもしれません。
一番よくないのは、子どもの成績が下がると怒鳴ったり叱ってばかりで悪循環にハマって、6年生も後半になってから塾へ相談に駆け込んでくるケースです。
――それは、相談に来られるほうも大変そうです……。
富永:こちらも受験指導のプロとはいえ、その時期になると「もっと早い段階で手を打てば間に合ったのに……」とお手上げ状態になってしまいます。
瞬間的にヒステリックになることは、親なら誰でもあると思いますが、恒常的にガミガミ言い続けてしまっているなら、やっぱり親が変わらないといけません。塾への相談も、早ければ早いほうが対策可能なことが多いので、もっと上手に他人を利用してほしいですね。