ただ話すだけなのに「頑張る」「疲れる」「気を使う」……。日々のコミュニケーションで苦戦苦闘している日々よ、さようなら。これからは、説得しようと力業で勝負する必要はありません。自ら動くのではなく、相手に動いてもらい、自分の思い通りの結果に導けばいいのです。
それを可能にしたのが、大久保雅士著『メンタリズム日本一が教える「8秒」で人の心をつかむ技術』だ。「トップセールス」の実績を持つ「メンタリズム日本一」が生んだ至極のコミュニケーションスキルが詰まった一冊。本書より、徹底的に磨かれたノウハウを一部抜粋し、「口下手で人付き合いが苦手」な人でも今日からすぐできる方法を紹介する。

自己肯定感の低い私がなぜ、メンタリズムを極められたのか?Photo: Adobe Stock

自己肯定感の低さは武器になる

 メンタリズムに出合う前の私は、いわゆる「コンプレックスの塊」のような人間でした。

 小学生の頃は、人前に出ると緊張で泣いてしまう、友達にいじられると返し方がわからず泣いてしまう、そんな極度のあがり症の泣き虫。中学や高校は部活というコミュニティで、なんとか自分の居場所を見つけますが、口ベタで人付き合いが苦手な私は、部活以外の友達も少なめ。大学デビューで自分を変えるんだと息巻いたものの、東京の大学生は皆キラキラしていて、田舎者の自分はさらにコンプレックスが強まっていきました。

 目指すものも特になく、就職活動も「大手にいければいいや」とひたすら受けて、就職できたのが生命保険会社。入社1年目の営業では、ピンポンを押した後、「居るなよ、居るなよ」「出るなよ、出るなよ」と念じてしまうくらい営業に向いていないタイプでした。

 何をやってもダメダメでした。「私なんかが努力したって、どうせ何もうまくいかない」と思い込む、とにかく自己肯定感が低い人間だったのです。

 そんな私が、メンタリズムに出合ったのは、社会人になってからのこと。会社の上司に、「この紙に初恋の人の名前を書いてみなさい」と言われたので素直に書いたら、なんとピタリと当てたのです。衝撃でした! 私が今まで知っていたマジックとも一線を画すパフォーマンスに度肝を抜かれました。

 どうしても、この技術を手に入れたかった私は、同期トップの実績を出すことを条件に、教えてもらうことを約束してもらいました。そして数ヵ月後、死に物狂いで結果を出し、「秘密の技術」を手に入れることができたのです。

 この技術は、「手先の器用さ」も「特別な才能」も必要ありませんでしたが、それ以上に「人を観察する目」が必要でした。

 メンタリズムは、仕掛け(トリック)を知っていればできるわけではなく、相手の思考を想像し、予測することで最大限のパフォーマンスを発揮するのですが、ここが意外と皆さんできないのです。しかし、ここで私の経験が生きてきました。

 自己肯定感の低いコンプレックスの塊の私は、常に「人の目」を気にしていました。

「人に嫌われたくない」「いい印象を持っていてほしい」と、自分の意見や気持ちを隠して周囲の人に合わせてきたのですが、その分、相手の立場に立った視点や気持ちで物事を考えるクセがあったおかげで、すんなりとできたのです。

 自己肯定感が低かったおかげで、自分を過大評価せず、徹底して準備をする意識が根付いていました。さらに人の目を気にしてきたことで、「相手に不快感を与えていないか」「自分は今どのように見られているか」といった、人の表面上ではわからない裏の気持ちを察することができたのです。人の目を気にするからこそ身についた、「場の空気や雰囲気を読み、相手の考えていることを察する性格」はメンタリストにはピッタリでした。

「自己肯定感の低さは武器になる」――このことに気付くことができたのです。

(本原稿は、日々のコミュニケーションがラクになる36のノウハウが詰まった書籍『メンタリズム日本一が教える「8秒」で人の心をつかむ技術』から一部抜粋、編集したものです)