65歳からの年金受給額は、一般的なサラリーマンの場合、現在の水準で1カ月あたり16万円程度。もしも月10万円の住宅ローン返済が続いたら、ローン返済後に手元に残るのは月6万円。光熱費や通信費などの固定費を払えば、あっという間になくなってしまうだろう。妻の年金収入を食費に充てて、何とか生活していけるかどうか……というところだ。

 このような状況で、もし夫婦のどちらかが亡くなるようなことが起きれば、1人分の年金収入だけで暮らしていくのは困難だろう。

 この本を手に取っている人の中には、住宅ローンの完済年齢が75歳や、もしかしたら80歳という人もいるかもしれない。年金生活に入ってからもローン返済が延々と続くケースは、今後増えていくと考えられる。返済が滞れば、高齢になってから家を手放さざるを得なくなるおそれもあるのだ。

手取り減少、消費税増税、教育費高騰……
“下流予備軍”が増えるこれだけの理由

 老後の生活に対して不安を抱く人が増え続けている。

 現役時代にはそこそこ稼いでおり、それなりの生活ができていた人が、老後になった途端に経済的に厳しい生活を送るようになってしまう人たちが報道やノンフィクション本で取り上げられる機会が増えているからだろう。年収が高くても、年金生活になり、「今お金に困っている」「病気の治療費さえ手元にない」といった人たちの事例を知り「自分もそうなったらどうしよう」と不安に感じる。

 一体なぜ、“下流予備軍”が増えているのか?

 家計相談を受けていて感じるのは、10年ほど前と比べると、同じ世代でも貯蓄額が顕著に減っていることだ

 私の場合、企業向けのセミナーをきっかけに家計相談を受けにくるケースも多いため、長年にわたりセミナーを任されている企業なら社員の貯蓄額の経年変化も把握できる。10年前の40代~50代と今のこの世代では、勤務先が同じで役職も同等なケースでも、貯蓄額に大きな差がついてしまっているのだ。

 背景には、いくつかの要因がある。