全国3000社が導入し、話題沸騰のマネジメント法「識学(しきがく)」の代表・安藤広大氏の最新刊『数値化の鬼』。「仕事ができる人」に共通することは、「数字で考えること」や「数値化のクセをつけること」だと言う。数字によって自分の不足を客観的に受け入れ、次の行動設定や行動変容につなげることによって、人は「急成長」する。
「数字で人を見るな」「数字がすべてではない」ということはよく言われるが、「数字」は決して無視できない存在。この本では、「感情を横に置いて、いったん数字で考える」「一瞬だけ心を鬼にして数値化する」など、頭を切り替える思考法を紹介する。

【3000社の会社を見てきた結論】上司が語る「昔の成功体験」は、なぜ役に立たないのか?Photo: Adobe Stock

他人の成功論はすべて
「変数」ではなく「仮説」

 仕事には考え方の「型」があります。そういう話をすると、次のような意見が出てくるのではないでしょうか。

そうはいっても、自分で改善点を見つけるのは難しい。やるべきことの『答え』を教えてほしい

 世の中には、「これが大事なノウハウだ」と語っている本がたくさんあります。ネット上にもSNSにも、ノウハウが溢れ返っています。

 たしかに、それらのノウハウは、あなたにとってヒントになる可能性があります。あくまで可能性であって、絶対に正しい答えではありません。

 なぜなら、「まだ『変数』ではなく、『仮説』だから」です。それについて説明していきましょう。

すべては「個人的な体験談」

 たとえば、ある営業のトップセールスマンが書いた営業ノウハウ本があるとします。

 その本を書いた人にとって「これが変数だった」という体験談が書かれているはずです。その本に、次のようなことが書かれているとします。

「髪や歯、肌の美容を整えることで仕事の成果が出ました。顔のパーツは重要です。男女にかかわりなく自分磨きをすれば、営業はうまくいきます」

 さて、そのノウハウをあなたはどう受け止めるでしょうか?

 これが営業の絶対的な成功法則だと思うでしょうか。もし、そう思うのであれば、マズい状態です。

 もちろん、自分磨きで効果が出る可能性はあります。だから、それを「仮説」として受け入れるのはアリです。

 ただ、あくまで仮説です

 それを受け入れて試してみて、あなた自身の目標の達成に数字的な変化があるのであれば、「仮説」が「変数」になります。その順番を間違ってはいけません。

「プロセス介入」も「仮説」である

 本やネットの情報に限らず、社内で上司から受けるアドバイスも「仮説」です。

「私が新人だった頃は、こういう方法でうまくいった」

 というような武勇伝を聞かされる場面があると思います。その上司とあなたは、たしかに同じ仕事をしているかもしれません。

 しかし、上司の成功法則は、あなたにとっては「仮説」です。時代が違いますし、能力や素質も違います。

 私の本も、そうなってしまう可能性を秘めています(笑)。だからこそ、「具体的なプロセスは教えるべきでない」と何度も伝えています。それに、具体的な話や実践法はあくまで「1つの事例」で、「型」の話しかしていません。その「やり方の元になっている考え方」の部分しか本には書かないようにしています。それを知った上で、ぜひ『数値化の鬼』をチェックしてみてください。

安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)のジェイコム株式会社で取締役営業副本部長等を歴任。2013年、「識学」という考え方に出合い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2022年7月現在で、約3000社以上の導入実績があり、注目を集めている。20万部を突破した最新刊『数値化の鬼』(ダイヤモンド社)の他に、36万部のベストセラー『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)がある。