全国3000社が導入し、話題沸騰のマネジメント法「識学(しきがく)」の代表・安藤広大氏の最新刊『数値化の鬼』。「仕事ができる人」に共通することは、「数字で考えること」や「数値化のクセをつけること」だと言う。数字によって自分の不足を客観的に受け入れ、次の行動設定や行動変容につなげることによって、人は「急成長」する。
「数字で人を見るな」「数字がすべてではない」ということはよく言われるが、「数字」は決して無視できない存在。この本では、「感情を横に置いて、いったん数字で考える」「一瞬だけ心を鬼にして数値化する」など、頭を切り替える思考法を紹介する。

【3000社の会社を見てきた結論】できるリーダーがやっていること・ベスト1Photo: Adobe Stock

「やること」は放っておくと
どんどん増えていく

 仕事ができる人は、その仕事の「変数」を考えます。「変数」を押さえれば、どこに力を入れればいいのかがわかります。

 ただ、変数を考えるときに、もっとも気をつけないといけないのは、「変数は放っておくと増える」という点です。

 仕事を覚えていく過程で、押さえておかないといけないポイントは増えます。自分で見つけ出したり、社内から教えてもらったり、本やネットで学んだりして、仮説を変数に変えていくでしょう。

 その結果、どういうことになるかというと、「すべてが大事だ」という考えに陥るのです。

 変数が増えるということは、考えることが増えるということです。KPIが多すぎたり、社内の変数が多かったりすると、余計なことを考える時間が増えてしまうのです。

 そこで必要なのが、「変数を捨てる」という考え方です。これは、特に優秀なリーダーに求められる能力です。

「やらないこと」を先に決める

 ある有名な投資家は、「やりたいこと」をまず10個書くそうです。

 そして、10個を書き切ったら、その中で上位の3つを「今すぐやるべきこと」にし、残りの7つを「やらないこと」にします。

 3つの「To Doリスト」と、7つの「Not To Doリスト」が出来上がります。

 ここで重要なのは、やりたいことの中で「7つを捨てる」ということのほうです。そうすることによって、最重要事項である上位3つに集中できるからです。そこまで絞って、ようやくやり遂げることができます。

 変数も同じです。「新規顧客も既存顧客も大事で、アポを入れたりケアをしたり、経費削減をしたり、若手育成もして……」と、重要なことが多すぎると、全体のパフォーマンスは落ちます。そうならないためには、変数を減らすことが重要です。

変数を減らす「2つのアプローチ」

 変数を減らすためには、2つのことが考えられます。

 1つ目が、個人として「他に変数がないかを考え、前例を手放すこと」。
 2つ目は、チームとして上司やリーダーから「それは変数ではない、と指示をすること」。

 前者は、優秀なプレーヤーなら無意識にやっていることかもしれません。過去にうまくいった成功法則も、環境や時代が変わると通用しなくなります。そのことに自覚的であれば、「他に方法はないだろうか」「もっと効率的にできないだろうか」と、自分に厳しくすることができます。

 自分がやってきたことを疑う。これは、言うは易しで、なかなかできることではありません。これまでのやり方でうまくいっているならば、それを手放すことなんて簡単にはできないでしょう。

 それを可能にするためには、「数字」に注目します。同じ方法なのに、思った以上に成果が出ないことがあると思います。

 そのとき、「売上が上がっていない」「利益に影響していない」という事実を受け止めることができると、変数だと考えていた要素が変数でないことに気づけます。

 変数を手放すためにも、「数値化の鬼」になることが有効なのです。その詳しい方法は、『数値化の鬼』に書きましたので、ぜひチェックして、つねに数字を基に考えるようにしましょう。

安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)のジェイコム株式会社で取締役営業副本部長等を歴任。2013年、「識学」という考え方に出合い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2022年7月現在で、約3000社以上の導入実績があり、注目を集めている。20万部を突破した最新刊『数値化の鬼』(ダイヤモンド社)の他に、36万部のベストセラー『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)がある。