倒産したところで
命までは持っていかれない
しかし、いくら最悪の事態を想定して毅然と陣頭指揮を執っていても、心が疲弊することもあるだろう。経営者だって、生身の人間なのだ。そんなときは、「事業環境は、良いときもあれば、悪いときもある。良いときも長くは続かないし、悪いときも長くは続かない」と割り切ることだ。業績が良いときも慢心してはいけない。逆に、先々を読んできちんとした手を打ったにもかかわらず、景気など外部要因のせいで結果が出せないこともあるが、これも長くは続かない。目先の状況がいくら悲劇的であろうとも、希望を失ってはいけない。諦めなければ、いずれ必ず状況は動いていく。
経営者にとって、最悪の結末は倒産だろう。不況になり、メディアが倒産件数が増えた、などといって騒ぐと落ち着かない気持ちにもなる。しかし、日本の倒産件数を全法人数で割ってみるとどうだろう。仮に、実際に稼働していると思われる企業数200万社で割ってみても、倒産確率は微々たるもの。実は日本の会社は、ほとんど倒産することはないのである。
また、倒産したところで、命まで持っていかれるわけではない。そう思えば、あとは割り切りの問題で、そうこうしているうちに、景気が循環して戻ってきたりする。時が解決してくれるのである。
もし、それでも悩みに悩んだときには、今日に生きることだ。悩んでもどうにもならないと頭ではわかっていても、悩みが尽きないこともあるだろう。私も、そんな気持ちに苛まれたこともあった。寝床に入っても眠れなかったりもした。
ただ、そういうときでも、やらなければいけないことはある。それを粛々とやっていくのみなのだ。自分ではどうにもならないことについては、いったん横に置いて、とにかく、今やるべきことをやる。悩みごとは、また別の機会に考えればいい。寝床でいくら悩んだところで、事態が好転するわけではない。疲れ切った心身では、いいアイデアも浮かんでこないだろう。
経営者は孤独である。これは、仕方がないと覚悟を決めておかないといけないし、自覚しておかなければいけない。だからこそ、相談に乗ってくれる先輩の経営者をメンターとして持っておくことも有効だ。