1972年、26歳の時にパン屋の2階のオフィスでジャパンマクニクス(現マクニカ)を創業した神山治貴・マクニカ名誉会長。その後50年間で連結売上高7610億円、従業員数3900人の東証プライム上場企業に成長させた。しかし、いつでも順風満帆だったわけではなく、バブル崩壊やリーマンショック、半導体不況など、幾度もの外部環境の悪化に直面した。最善の手を打ったはずなのに事態が悪化していき、寝られぬ夜を過ごすこともある。そんな時、神山氏はどのように乗り越えてきたのだろうか。神山氏の著書『経営の本質 すべては人に始まり人に終わる』から抜粋してお届けする。(マクニカ名誉会長 神山治貴)
経営者はあらかじめ
最悪の事態を想定せよ
経営をやっていると、本当にいろいろなことが起こる。良いことも起こるが、大小問わず、さまざまなトラブルも突然やってくる。最善と思われる手を尽くしたのに、事態が一向に上向かず、絶望的な気持ちになる局面も、当然ある。そもそも世の中は何が起きるかわからないし、何が起きても不思議ではない。そう腹を括ることである。
実際、10年20年という長いスパンで見れば、本当にいろいろなことが起きている。 しかも、そのときどきで形を変えてやってくる。天災もあれば、新型コロナウイルスのような、100年に一度のパンデミックも起こるし、戦争だって勃発する(ちなみに、本書の原稿を書き始めた時には、よもやウクライナで戦争が始まるなどとは夢にも思わなかった)。
リーマンショックのように世界経済がどん底に叩き落とされるような大不況もあるし、半導体不況のように、我々の産業が危機に直面することもあった。
そのたびに慌てないために、経営者はあらかじめ、ワーストケースの場合の腹決めをしておく。それが自分の会社にどういう影響があるのか、イメージしておくのだ。「この程度で済むだろう」という希望的観測を持ってはならない。徹底的にシビアになり、 想像し得る最悪の事態になったらどうするか、ということを考えるのだ。
その準備をしておくと、現実的に最悪のケースにならなかった場合には、取り越し苦労で済む。逆に、楽観的な見方をしていると、事態がさらに悪化した時には「想定外だ」と大慌てする羽目になる。そのときは、ただでさえ厳しい状況に陥っているのに、 余分なエネルギーと時間を費やすことになって、泣きっ面に蜂である。