リタイアを迎え、資産を目標額まで築けたら「資産運用」は終わりなのでしょうか。あるいは、理想的な資産運用の終え方というのはあるのでしょうか。資産運用のロボアドバイザーサービスを展開するウェルスナビ代表取締役CEOの柴山和久さんの著書『これからの投資の思考法』より柴山さんの見解を紹介していきます。

リタイア後、資産運用をどう終えるのが理想的か?(Photo: Adobe Stock)

多くの人にとって、資産運用の目的は、安心して老後を送るための資産を築くことです。リタイアを迎え、資産を目標額まで築いたとしても、資産運用はある日突然終わるわけではありません。「長期・積立・分散」のうち、「長期」と「分散」を残して、一定額を毎月取り崩していくことになります。

たとえば「60歳までに3000万円の資産を築く」という目標を達成したとして、60歳になって直ちに3000万円が必要になるわけではありません。60歳時点でまだ働いていれば、しばらくは「長期・積立・分散」の資産運用を続けられるかもしれません。仕事を辞めて収入がなくなった後は、生活費から国や企業の年金を差し引いた金額を、3000万円の金融資産から毎月支出していくことになります。

資産を取り崩すメリットは、一括で引き出すわけではないので、リタイア時点でたまたま株価が高いか低いか、円高か円安かに左右されずに済む、ということです。積立投資が株価や為替のリスクをある程度コントロールできるのと同じで、毎月取り崩しをすることで、株価や為替のリスクを和らげることができます。

これならリタイアした後も、長期にわたって資産運用を続けられます。資産を毎月少しずつ取り崩していっても、残りの資産についてはそのまま運用が続くので、老後の生活をより長い間支えられます。

(米国人の)妻の両親は数年前にリタイアしたので、毎月、プライベート・バンカーに運用資産を取り崩してもらっています(注:妻の両親は、勤め先の福利厚生の一環で、若いときからプライベート・バンクで長期・積立・分散の資産運用を続け、資産を数億円に増やしていました)。運用している資産が多いため、リタイア後も資産の額が増え続けています。つまり、運用で資産が増えるスピードが、取り崩しのスピードを上回っているのです。やや極端な事例ですが、「長期・積立・分散」の資産運用をリタイア後も続けていく効果の一例だと思います。

生活費に余裕がある間は「長期・積立・分散」の資産運用で資産を築き、リタイア後は「長期・分散」で毎月取り崩しをしながら資産運用を続けていくのがいいでしょう。