デカルトの「心身二元論」とは?

 哲学の世界に「機械論」という考え方があります。

 自然界におけるさまざまな運動は、特別な目的があるわけではない運動の連鎖であるから、それは機械と同じであるという考え方です。

 近代の機械論もデカルトから始まりました。

 この世界では人間以外は精神を持たない。

 しかし人間の身体について考えれば、それは他の動物や植物と同じく物体である。

 であるから動植物も人間の身体も、原理上は機械に等しい、とデカルトは考えたのです。

 宇宙も人間の身体も同一の法則によって支配されている、という考え方です。

 それは古代の原子論につながる一方で、現代の宇宙や人類誕生の理論にも共通する側面があるように思えます。

 人間の精神や意識と物体としての人間の肉体は、別のものであるとデカルトは述べています。

 精神や意識は神に与えられた生得観念によって、努力し勉強すれば完成度を高くすることが可能だが、肉体は不変である。

 人間はこのように精神と身体の2つに分かれていると、デカルトは考えていました。

 心身二元論です。

 そして人間が自分の意識を高める認識の方法についても、『方法序説』の中で書き残しています。

デカルトの『方法序説』は
管理職教育に有効

 この認識の方法はとてもわかりやすく、現代でも十分に通用しそうです。

 ベーコンが考えた人間の4つのイドラ(→本書313-315ページ)も、僕たちの思考方法に警鐘を鳴らしてくれたのですが、もっと明解かもしれません。

・まず明証:それが真理であることが疑いえない、明らかな証拠を、まず見つけること
・次いで分析:集めた証拠をきちんと細部まで分析する。ディテールまで検分する
・そして総合:細部まで検分しただけで終わりにするな。それを総合して全体的な検証を
・最後に吟味:最後に吟味せよ。洩れはないか。見落としや見誤りはないか

 この明証・分析・総合・吟味という認識の方法は、現代のビジネスパーソンなかんずく管理者の教育にも有効だと皆さん思いませんか?

『哲学と宗教全史』では、哲学者、宗教家が熱く生きた3000年を、出没年付きカラー人物相関図・系図で紹介しました。

 僕は系図が大好きなので、「対立」「友人」などの人間関係マップも盛り込んだ全3000年史を、1冊に凝縮してみました。

(本原稿は、15万部突破のベストセラー、出口治明著『哲学と宗教全史』からの抜粋です)