分配金を投資信託の資産から出す「タコ足分配」が問題視された結果、毎月分配型でここ数年人気なのが「予想分配金提示型」だ。「退職後の“年金の足し”に」と、毎月分配型に投資する人は多いが、はたしてこのタイプはその役割を果たせる?

年金の足しにできる?人気の「予想分配金提示型」の毎月分配型は高分配を維持できるのか「高分配で魅力的!」と思って買ってみたら翌月の分配金が0円のことも……。イラスト=山崎真理子

分配金を出す基準が明瞭でタコ足のリスクが低い

 予想分配金提示型とは、あらかじめその時の基準価額によって分配金の水準を定めている毎月分配型投資信託のこと。

 たとえば、純資産トップである「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」が、このタイプ。設定が2014年で予想分配金提示型のさきがけ的な存在だ。

 基準価額が1万4000円以上なら分配金を500円、1万3000円以上1万4000円未満なら400円、1万2000円以上1万3000円未満なら300円、1万1000円以上1万2000円未満なら200円、1万1000円未満は基準価額の水準などを勘案して決定する、という方針だ。

成長株型の投資信託が多く安定分配は望みづらい

 このように、基準価額が下がっても一定の分配金を支払い続ける従来の毎月分配型とは違い、基準価額が下がったら分配金も下げる方針を掲げている。分配金を出す基準も明瞭だ。

 このタイプの投資信託でも、ここ数年は投資対象の米国株市場が好調だったことから200~300円の高分配を出し続けていた。これに追随して設定された、ほかの予想分配金提示型も高分配を出していることで人気になった。

 ただ、人気の予想分配金提示型の多くは、投資先が海外の成長株だ。これは、配当が高くなく、長期で値上がりを狙うタイプの株。主に株価の上昇分から分配金を出しているので、株式市場がひとたび下落に転じれば、分配金も減る点に注意だ。

 現に、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」は、22年5月と6月の基準価額が1万1000円未満だったため、分配金は0円だった。7月は100円、8月は200円、9月は100円の分配金を出している。ただ同じ投信の為替ヘッジありタイプは、いまだに分配金が0円のままだ。

長期で上昇を狙いたいなら分配金なしのタイプを

 予想分配金提示型は、「基準価額が上昇した時だけ分配金で利益を受取りたい」という人には向いている。無理して分配金を支払わないので、タコ足のリスクも低い。

 しかし、月々安定的な分配金を受取りたい人には不向き。成長株自体の値動きは大きいので、分配金の有無については基準価額の動向次第になるからだ。

 また、予想分配金提示型には米国成長株やAI株などの大きな値上がりを狙う投資対象の投資信託が多い。長期で基準価額の上昇を狙いたいならば、分配金がない投信を選んだほうが効率よく増やせる。

年金の足しにできる?人気の「予想分配金提示型」の毎月分配型は高分配を維持できるのか2022年5月末時点では予想分配金提示型の人気上位10本の分配金が0円に。直近の9月は10本中で8本が0円だった。※上位10本は22年5月末時点の純資産上位
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