「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。
毎朝1時間、認知症患者に電話
【前回】からの続き 本書の冒頭で、私が毎朝、認知症の患者さんに電話していることを書きましたが、それは完全なボランティア活動です。認知症の進行に休日はありませんから、土日も祝日も欠かさず行っています。
私は数年前、「サルコイドーシス」という良性の腫瘍がお腹にできて入院し、とり除く手術を受けたことがあります。個室に入れましたから、入院している最中も毎朝、病室から患者さんに電話をかけました。
担当の看護師さんに、「先生、朝から誰に電話しているんですか?」と尋ねられたので、事情を伝えて自分の患者さんに毎朝電話していることを説明すると、「えっ、毎日ですか! それは、すごいですね」とビックリされました。
何もしないと症状が進む認知症
医者の集まりでも、このボランティア電話のことを話すと、「よく続けられますね、私は続ける自信がないなぁ」と半ばあきれられるのが常です。こうした患者さんとの接し方は、父の背中から学んだことです。
患者さんを大切にするという使命感が、それこそ子どもの頃から身についていますから、毎朝1時間ほどのボランティア活動が続けられているのでしょう。看護師さんに驚かれながら、入院中も私が電話をかけていたのは、たとえ1日でも空いてしまうと、その間に患者さんの認知症が進行する恐れがあるからです。
ましてや入院が長くなり、仮に1週間電話ができなかったとすると、あれよあれよという間に認知機能は低下しかねません。認知症が怖いのは、前述したように、進行性かつ不可逆的だからです。何もしないと症状が進んでしまい、一度進んだ症状を、元に戻すのが難しいのです。 【次回に続く】
※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。(文・監修/松原英多)