「このまま」今の仕事を続けても大丈夫なのか? あるいは「副業」をしたほうがいいのか? それとも「起業」か、「転職」をすべきなのか? このように感じたとしたら、それは皆さんの考えが正しい。なぜなら、今感じているお金に対する不安は、現実のものとして近づいているからです。無収入となる65歳から70歳、もしくは75歳までの空白期間を、自己責任で穴埋めしなければならなくなる未来が、相次ぐ法改正でほぼ確定しました。
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【ジブリ映画に学ぶ】「お金」より「稼ぎ口」を増やしたほうがいい理由Photo: Adobe Stock

基軸通貨国アメリカでさえインフレを防げなかった

 30年ぶりの円安と騒がれていますが、物価高での円安は実に40年ぶりです。円安も物価高も、いずれは収束すると思いますが、21世紀に入ってから想定外の出来事が次々と起きているので、油断禁物です。

 特に日本は、平成の失われた30年の間、ずっとデフレ続きでしたので、どこかの有事が引き金になって、一気にインフレが加速する可能性も十分にありえます。もし今後もインフレが進行し続けた場合、3000万円の蓄えがあったとしても、30年後の価値が300万円になることもないとはいえません。

 そんなときに頼りになるのが、後述する「稼ぎ口二刀流」です。基軸通貨国アメリカでさえ、異常なインフレを防げなかったのですから、用心するに越したことはありません。

 インフレやデフレのような経済現象は、素人にはわかりにくいので厄介です。そこで今回は、なじみのあるジブリ映画を元に、そのカラクリを紐解いてみます。

日本のアニメには学びの要素が多い

 海外からの渡航制限が解除され、日本への旅行客が増え始めました。外国人が日本に親しみを感じるきっかけとして、よく耳にするのがアニメです。

 日本人にとってはなおさらで、アニメから学べる「マンガ・アニメミュージアム」は、全国に60館以上あるといわれています。最近では愛知県に「ジブリパーク」が開園しました(2022年11月)。

 ジブリ映画は老若男女を問わずに愛されていて、私もファンの一人です。世界歴代興行収入TOP10にランクインする日本のアニメ映画のうち、6作品がジブリ映画だという数字も、確かに頷けます。

 ジブリ映画の中で最も興行成績が高かったのは、2001年に公開された『千と千尋の神隠し』です。2020年に『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が上映されるまで、19年間の長きにわたって、ランキング1位を守り続けてきました。この映画からは、実に多くのことを学べるのですが、人気の裏側にはそんな背景があるのかもしれません。

『千と千尋の神隠し』から学べる資本主義のカラクリ

『千と千尋の神隠し』は、アニメにしては珍しく、資本主義社会のカラクリが学べる映画です。主人公は千尋(ちひろ)という女の子ですが、裏側の主役はカオナシです。

 カオナシは「相手の欲望をクローズアップして引き出して具現化していく媒体・触媒」として描かれています。カオナシは普段、姿を見せません。それでいて、自由自在に砂金を作り出す特異な能力を持っています。しかもその砂金は、なんと偽物です。

 ところが、誰一人として偽物とは気づかず、温泉旅館「油屋」で働く男も女も砂金に目がくらんでしまい、結果的に「油屋」は大損害を被る展開となります。

 まさに、資本主義社会のカラクリそのものです。なぜなら、私たちが当たり前のように使っている紙幣も所詮は「偽物」だからです。紙幣が「偽物」だからこそ、インフレやデフレの制御に苦慮するわけです。

 たとえば、世界で一番流通している米ドルも、次に流通しているユーロも、中央銀行とは名ばかりの民間銀行が印刷しています。民間銀行が印刷した紙切れですから、所詮は偽物です。そして、自由自在に紙幣を印刷できる民間銀行のオーナーは、偽物の砂金を自由自在に生み出せる「カオナシ」そのものです。

 そんなプリンティングマネーに心を奪われた私たちは、「油屋」で働く男と女に似ています。名前を奪われて本当の自分を見失っているので、「お金のため」だけに馬車馬のように働き続けます。

 油屋を経営する湯婆婆(ゆばーば)は、さながら巨大グローバル企業のオーナーです。

印刷されたお金には、本当は価値がない

 映画の中で湯婆婆(ゆばーば)は、自分の大切なモノがすべて偽物に入れ替えられていることを指摘されて初めて、砂金も偽物であることに気づき、その瞬間に砂金は泥に変化します。

 現実のお金もこれと同じで、お金に価値がないことに全員が気づいた瞬間に通貨は大暴落してきました。通貨が大暴落する現象のことをハイパーインフレと呼んでいて、戦後の日本も含めて、これまでに色々な国で発生してきました。

 今の日本でハイパーインフレが発生する可能性は極めて低いですが、30年も経済が成長しない異常なデフレを経験し、さらに今年は急激なインフレを経験しています。物価が高騰するインフレは全世界で進んでいますが、物価上昇をコントロールすることは至難の業なのです。なぜなら、印刷されたお金には本来、価値がないからです。

お金を増やすより、稼ぎ口を増やす

 もし仮に、今後もインフレが永続的に進行し続けた場合、お金の価値が10分の1にも満たないかもしれません。

 そのように考えると、一番現実的な防衛策は「お金を貯めることではない」ことに気づきます。20年後も30年後も40年後も、自分自身が稼ぎ続けられる存在になることしか、解決策はないのです。

 自分自身が「稼ぎ続ける」とは、「雇われ続ける」意味ではありません。雇われ続ける限り、「油屋」で馬車馬のように働く男や女と同じだからです。

 そうならないためにも、サラリーマンには「稼げるライフワーク」が不可欠です。本業以外で2つ目の稼ぎ口となる「稼げるライフワーク」を獲得する生き方を「稼ぎ口二刀流」といいます。「稼げるライフワーク」さえ見つかれば、「油屋」で働く男と女のように名前を奪われて、本当の自分を見失う心配はありません。お金のためだけに、馬車馬のように働く必要もなくなるのです。

**本記事は、『40代からは「稼ぎ口」を2つにしなさい 年収アップと自由が手に入る働き方』著者による書き下ろしです。