ただ話すだけなのに「頑張る」「疲れる」「気を使う」……。日々のコミュニケーションで苦戦苦闘している日々よ、さようなら。これからは、説得しようと力業で勝負する必要はありません。自ら動くのではなく、相手に動いてもらい、自分の思い通りの結果に導けばいいのです。
それを可能にしたのが、大久保雅士著『メンタリズム日本一が教える「8秒」で人の心をつかむ技術』だ。「トップセールス」の実績を持つ「メンタリズム日本一」が生んだ至極のコミュニケーションスキルが詰まった一冊。本書より、徹底的に磨かれたノウハウを一部抜粋し、「口下手で人付き合いが苦手」な人でも今日からすぐできる方法を紹介する。

【ゲインロス効果】高価な一点モノより、安価な2つのプレゼントで相手の心をつかむ方法Photo: Adobe Stock

「贈り物は2つ」が鉄板。喜びが増幅する魔法のプレゼント

「今まででもらったプレゼントの中で、一番うれしかったものは何ですか?」

 私がそう聞くと、ある経営者の方は、「妻に渡す用のプレゼント」と答えました。

 その方は仕事がとても忙しく、家族サービスはおろか、大好きな車のケアもできませんでした。それを知った生命保険の担当営業マンが、「私が綺麗に洗っておきますから、車を貸してください」と言うので、任せたようです。

 後日、見違えるように綺麗になった車とは別に、後部座席には「奥様にお渡しください」とプレゼントが置いてあったのです。しかも、夫からのプレゼントとして、です。車を洗ってくれただけでもうれしいのに、妻へのプレゼントまで用意してくれたのですから、一気に心をつかまれたと言っていました。

 日頃お世話になっている方への贈り物や、部下や同僚にちょっとしたプレゼント、また大切な取引先への贈答品まで、ビジネスシーンで贈り物を渡すことがよくあります。そんなとき、さりげなく距離を縮めるには、贈り物を2つ用意しましょう。

 たとえば、「本命」と「ダミー」の2つのプレゼントを用意します。ダミーのプレゼントで残念がっていた後に、本命のプレゼントを渡し、相手を喜ばす。ギャップを利用したサプライズの演出が、さまざまな効果を発揮します。

 まずは、シンプルに喜びが増します。

 相手に簡単なプレゼントを渡し、ちょっと時間をあけて、「すみません。こっちが本当のプレゼントです」と渡せば「もう一つあるの?」と驚きで相手は喜びが増すはずです。私も営業マン時代に「粗品ですが」と取引先の企業に贈り物をし、本当に粗品である会社のキーホルダーを渡したことがあります。相手が「えっ、これいらないなぁ」という顔をしたところで、「すみません。こっちが本物です!」と手土産を渡し、その場を和ませることをよくやっていました。これを「ゲインロス効果」と言います。最初のイメージに対し、後の印象とのギャップを大きくすることで、心に与える影響が大きくなるというものです。

 今回のケースは、「価値のギャップ」によって後に渡した贈り物が最初の贈り物の価値よりさらによく映ったわけです。

 この方法は、少ない予算でも価値を高められる効果があります。

 数百円のプレゼントでガッカリさせた後に、数千円のプレゼントで喜んでもらえれば、場合によっては数万円の贈り物より相手の記憶に残るかもしれません。

 また、予算に余裕があれば、財布のプレゼントの中に相手が欲しがっていたコンサートのチケットを入れておくなど、価値の高いプレゼントを2つ用意して喜びをさらに倍増させることもできます。恋愛のケースでも使えますね。

 他にも、取引先の担当者への贈り物として、「みなさんで召し上がってください」と菓子折りを渡した後に、「○○さん用の物が別に入っているので、そちらもよろしければ」とお伝えするのも効果的です。

 最初から担当者に渡すより、「みんなに対しての手土産か」と感じた後に、「私個人にもあるの!」と思ってもらえます。こちらもギャップが生じて喜びが増します。

 さまざまなパターンが思い浮かぶかもしれませんが、大切なことは驚きを用意することです。冒頭のケースもそうですね。せっかく2つの贈り物を用意しても、最初から「プレゼントが2つあります」と言ってしまえば驚きがなくなります。

 驚きは期待値を上回って初めて生まれます。相手の期待値を超え驚いてもらえる演出をしましょう。

 また、2つの贈り物を渡す間隔があまりに短すぎると、効果も薄いので、面会のアタマとおしりくらい、しっかり時間をあけて、渡しましょう。

(本原稿は、書籍『メンタリズム日本一が教える「8秒」で人の心をつかむ技術』から一部抜粋、編集したものです)