ニュースで見聞きした国、W杯やオリンピックの出場国、ガイドブックで目にとまった国――名前だけは知っていても「どんな国なのか?」とイメージすることは意外と難しい。『読むだけで世界地図が頭に入る本』(井田仁康・編著)は、世界地図を約30の地域に分け、地図を眺めながら世界212の国と地域を俯瞰する。各地域の特徴や国どうしの関係をコンパクトに学べて、大人なら知っておきたい世界の重要問題をスッキリ理解することができる画期的な1冊だ。この連載では、本書から特別に一部を抜粋して紹介する。

「オーストラリアってどんな国?」2分で学ぶ国際社会Photo: Adobe Stock

オーストラリアってどんな国?

 オセアニアは東西約1万4000km、南北約1万kmにおよぶ広大な範囲をもち、オーストラリア大陸と大部分が南太平洋にある太平洋諸島を合わせた総称です。オセアニアの範囲のうち陸地面積は6%程度ですが、その陸地の9割を占めるのがオーストラリアです。

 オセアニアは文化の共通性等からポリネシア、ミクロネシア、メラネシアそしてオーストラリアの4つに分けられます。

 オーストラリア大陸は世界最小の大陸です。メルカトル図法などの世界地図ではオーストラリア大陸よりも世界最大の島グリーンランドが広く見えますが、実際のオーストラリア大陸はグリーンランドの3倍以上の広さをもちます。

豊富な地下資源で鉱業が盛ん

 オーストラリアは国土の3分の2が乾燥地帯であり、とくに内陸部は砂漠気候が広がります。こうした気候の中では農業が難しいですが、地下水や灌漑などにより牧畜がなされている地域もあります。

 また、不毛だと思われていた場所に地下資源が多く発見されたことから「ラッキーカントリー」と呼ばれることもあります。アルミニウムの原料であるボーキサイトと鉄鉱石の産出量は世界第1位(2017年)で、その他、石炭、天然ガス、ウランといったエネルギー資源や、金、鉛、チタン、リチウムなどの鉱物資源の産出も世界有数です。

 日本とのつながりが強く、日本へ石炭や天然ガス、鉄鉱石、牛肉などを輸出し、乗用車などを輸入しています。国別貿易額を見ると、日本は1割ほどを占める有数の貿易相手国となっています。

 1970年代はじめに発足した太平洋諸島フォーラム(PIF、2000年に南太平洋フォーラムから改称)は、オセアニア諸国の政治・経済・安全保障など域内共通関心事の討議を行います。

白豪主義から多文化主義へと転換

 1770年にイギリス人クックがシドニーに上陸し、イギリスが領有を宣言してからイギリス移民によって農地や放牧地が拡大しました。イギリスからは囚人が送り込まれ、1790年代には羊も持ち込まれましたが、内陸に入ると乾燥がひどく農業は不安定でした。

 そうした中、1851年に始まったゴールドラッシュで、世界各地から一攫千金を狙う採掘者が集まり人口が増加すると、ヨーロッパ系住民を優遇する移民制限法が1901年に施行され、白豪主義政策が採られました。

 しかし、第二次世界大戦後、豊富な鉱物資源が発見されると、ヨーロッパからの労働者だけでは労働力が足りなくなり、かつヨーロッパ以外からの開発資金を調達する必要に迫られました。白豪主義と経済的発展が両立しなくなったため、経済発展を重視するために1975年に人種差別禁止法を成立させ、1978年には多文化主義を国策としました。

 すなわち、異文化を排除した白豪主義から、異文化を尊重する多文化主義へと大転換したのでした。世界中からの移民流入はその後も続き、2016年でも国民の3割は外国出身者です。

 一方で人口の数%を占める先住民アボリジナルピープルの権利も守られています。ウルル(エアーズロック)は、観光地として有名ですが、2019年に、登頂は先住民の神聖な場所をけがす行為として禁止されました。

「オーストラリアってどんな国?」2分で学ぶ国際社会オーストラリア

オーストラリア

面積:774.1万km2 首都:キャンベラ
人口:2581.0万 通貨:オーストラリア・ドル
言語:英語(公用語)
宗教:プロテスタント23.1%、カトリック22.6%、無宗教30.1%

(注)『2022 データブックオブ・ザ・ワールド』(二宮書店)、CIA The World Factbook(2022年2月時点)を参照

(本稿は、『読むだけで世界地図が頭に入る本』から抜粋・編集したものです。)