リモートワークで
認知症が増える可能性も

川島 コミュニケーションを忌避する世代は子孫を残さないでしょう。これは少子化の原動力であり、滅びゆく種族の最終形態かもしれません。ICTが人類の終焉のスイッチを押したということです。おっしゃった例のように、ICTがないと生きられないという識者や経営者はこれが人類終焉に向かう技術だと分かって言っているのでしょうか。提供する側は頭を使って作っているのですが、純粋に楽で便利で全人類にとって良い技術だと信じているふしがある。けれども楽で便利がいいとは低きに流れるということです。

 たとえば、今や介護の世界でバリアフリーでは寝たきりが増えることが分かり、あえてバリアを作る方向に動いています。また老人ホームでは個室より、共用洗面所を使う人のほうが寝たきりにならないというエビデンスもあります。その点で言うと、ICTに浸ってストレスなく楽なコミュニケーションに堕しているのは、「脳を寝たきり」にする劣悪なサービスを受けているともいえるのです。だから、身体的にはフィットネス施設に通ったり、運動したり、脳に対しては「脳トレ」をして、短時間で脳を使う時間を担保して、バリアに慣れさせることで、人類がどん底に落ちる時間をかろうじて遅らせることができると考えています。

秋山 あえて負荷をかけて、もともとの力を引き出す。

秋山進(あきやま・すすむ)プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役秋山進(あきやま・すすむ)プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役
リクルート入社後、事業企画に携わる。独立後、経営・組織コンサルタントとして、各種業界のトップ企業からベンチャー企業、外資、財団法人など様々な団体のCEO補佐、事業構造改革、経営理念の策定などの業務に従事。現在は、経営リスク診断をベースに、組織設計、事業継続計画、コンプライアンス、サーベイ開発、エグゼクティブコーチング、人材育成などを提供するプリンシプル・コンサルティング・グループの代表を務める。京都大学卒。国際大学GLOCOM客員研究員。麹町アカデミア学頭。

川島 リモート中心で脳を楽させて暮らしている人は認知症になりやすいのではないかと思います。

秋山 確かにオンライン漬けだと退化する気がします。考えるのがおっくうで、ひたすらリアクションして終わり。体を動かさないので、知的能力下がっていく気がして、最近はオンライン会議も出社してやることが多くなりました。

川島 私は外出自粛の1カ月以外はずっと出勤しています。AI中心の世界はホモサピエンスは猿に戻る。いや、猿より体を動かさないからたちが悪い。映画『マトリックス』の世界ですね。

秋山 パターン認識はAIが判断するのが早いから、人間がする必要はない。「楽に便利に」が過ぎると持てる能力を使わず、人類の死を招く。

川島 でも、AIを使ってミスが出ないというのは、おもしろくない社会です。たとえば首相が失言するから、それはだめだ、こうしなくちゃという批判やアイデアが出てくる。AIでそつなくこなしていたら誰も突っ込まず、議論もなく、国の行き先に対する関心も薄れる。今はなんちゃってAIしかないですが、そのうち本当に人間より高等なAIがすべて肩代わりするでしょう。

秋山 分からないこと、複雑性をはらむ問題について意思決定すると、間違うかもしれないけどそれをやって、失敗してまたやり直すことに意味がある。知り合いはコロナで人と話さなくなり、「アイデアが湧かなくなった。考えることもなくなり、集中力、生産力も落ちた」と嘆いていました。

川島 それに関しては、人にはデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)と呼ばれる脳内のネットワークがあります。人がぼんやりしているときにオンになって脳の沈静化に寄与します。実はアイデアが湧くのはDMNがオンで、歩いたり、お風呂に入ったりして、ぼんやりしているときなのです。逆に何かに集中するとこのDMNはオフになる。スマホが手元にあると、DMNがオフになったままなので、アイデアが湧いてこないのです。オンオフを測る装置もあり、計測すると、たとえばマインドフルネスによって、意識的にオンにできることが分かっています。