「おっちゃん社員」に
気を遣いながら働くNTTの若手

 たとえばNTT西日本では、新卒社員の最初の昇格である「一般2級」→「1級」への昇格試験で、最速でも「30歳の10月から」と、はやくも年齢による縛りがかけられ、どうあがいても20代のうちはずっとヒラのままである。

 NTTの地方支店は、出世競争から降りた「やる気のない50代」に満ち溢れ、「加齢臭が本当にすごい」(元社員)。ここに、新卒社員が配属となる。そこは、「50代以上が中心で『40代はまだ若手』という扱い」(若手社員)。

 その世界に20代が入ると、どうなるか。

「おっちゃんに仕事してもらうために、若手はかなり気を遣います。『あの人が言うからやる』という世界なので、営業だと、おっちゃんに客のところに行ってもらうために、普段から声を掛けて飲み会に誘って仲良くしたり。社内で、どうやってやる気のないおっちゃんたちを回していくか、に注力せざるをえない環境なので、社外で通用するスキルは身につきにくいです」(同)

 このおっちゃんたちが、約2倍の年収なのだからやってられないのだ、という。

2030年には「50代以上の中高年が6割超」の衝撃!

 NTTグループのような労働組合(労組)が強い規制業種は、リストラをしない計画なので、これで仕事が成立するのだろうか──と心配になるほど、社内が高齢化していく。平均年齢44.1歳のNTTコミュニケーションズは、「改正高年齢者雇用安定法」を忠実に守り、65歳まで雇用。60歳以降は、かつては年収200万円程度だったが、これを300~400万円に引き上げるため、40歳以降の賃金上昇カーブを抑える人事制度改革も2013年に実施済みだ。

 その結果、社員の年齢構成は衝撃的な高齢化を遂げる見通し。同社がNHKを通して公表した人員構成は、「2030年に50代以上が63%を占め、最も多いのは34%を占める60代」というものだった。

「(2022年6月時点で)約6000人いる社員のうち、50代以上が3分の1にあたる約2000人を占めています。2025年には50代以上の社員が半数を超え、2030年には6割を超えると想定されています」(同社キャリアデザイン室)

 40代は、まだ若手だ。IT系で、50代以上の中高年社員が全体の6割超を占める会社は、いかにも活気がなさそうで、20代30代にとっては居心地が悪いだろう。

 40代の課長が、50代60代の部下をマネジメントしつつ、実際に戦力となる20代30代を率いて企業にITを導入するプロジェクトを成功させなければならない。組織としては本来なら必要がない50代60代が、国の雇用対策によって無理やり在籍しているのだから、自然の摂理に反し、違和感は否定できない。