「働き盛り」はない!「細く長く」働こう
――定年後について意外とポジティブに考えていいのかもしれないということは分かりました。しかし、日本は少子高齢化で若い世代の経済的負担がますます増え、厳しいものになっていきます。現役世代は、将来とどう向き合っていけばいいのでしょうか?
過去は、一生懸命仕事をして上り詰めて、定年を迎えれば“上がり”というキャリアでした。ですが、今は定年後も働くことが当たり前で、働く期間が長くなっています。その代わり、昔のようにがむしゃらに仕事をしなくてはいけないという風潮は弱まっていると思うんですね。現代は「細く長く」働いてもらうように変わらなくちゃいけない。
極端に言えば、若い人も年を取った人も同じだけの収入を稼ぐことができれば、少子高齢化で人口動態が変わっても、経済的に影響が出ないわけです。男女関係なく、「細く長く」働くことを前提に考えた方がいいと思います。一つの組織でがむしゃらに仕事をするような働き方はもうしなくていいという風潮に、社会が変わっていく必要があります。
30代、40代が「働き盛り」と言われていましたが、今後はそうとは限らない。例えば子どもが生まれて、仕事をセーブしますっていうのも、人生100年時代には「アリ」です。みんながみんな、出世を目指さなきゃいけないわけじゃない。そのあたりの考え方を変えていいと思うんです。
――30代、40代に出世しなくちゃいけない、頑張らなきゃキャリアを積めないという考え方は、古いのかもしれないですね。
キャリアアップは素晴らしいですし、スキルを高めることは素晴らしいことなんですけれど、そこまで気負いすぎなくていい。また同時に、企業の報酬も変わっていく必要があると思います。日本の大企業の報酬体系ってやはり年功序列の側面があります。これを若いうちに高報酬にして、中高年の報酬をもっと下げていくなど、フラットにしてもいい。人口動態に合わせて社会を変える必要があるのですが、とはいえ、なかなか現実は難しいところも多いです。
――幸せな「定年後」を迎えるために、30~50代のうちに必ず備えておいた方がいいことはありますか?
経済的な余裕は不可欠です。それを考えると「健康なうちは働く」というのが大前提です。厳しい言い方になりますが、ここまで少子高齢化が進んでしまったんですから、男性も女性も健康ならば、働くことが当たり前だと考え方を変えなくてはいけません。
また、定年前の働き方と定年後の働き方は違うという意識を持つことです。価値観の転換をうまくやらなくてはいけないというのを念頭に置いておけば、老後は悲惨な結果にはならないと思います。
――ありがとうございました。