身近な人がデマを
信じ込んでしまったら
また、誰かとディスカッションすることで、自分の持つ情報が本当に正しいのかを判断する機会を持つことも重要なのだという。
「『三人寄れば文殊の知恵』という言葉がありますよね。コロナに対する知識が乏しかったとしても、ディスカッションすることで問題の輪郭が浮かび上がることもあるはずです」
ただ、ディスカッションしても話が解決しない場面もある。相手が、デマやフェイクニュースを真実だと信じ込んでいる場合だ。宮坂氏がFacebookでやり取りをした人の中には、ディスカッションをしてもこだわりが解消しない人もいたという。
「『自分は正しい知識を持っているのだからこうでないといけない』という知識バイアスに陥ってしまうと、他者の意見を取り入れず、新しい情報を取り入れようとしなくなってしまいます。そうなると、会話のキャッチボールも難しくなってしまうのです」
家族や友人が、知識バイアスにかかってしまった場合はどのように対応するとよいのだろうか。
「身近な人がデマやフェイクニュースを信じ込んでしまい、悩まれている方もいるかもしれません。そう思い込んでしまった人の意見を否定しても、さらにかたくなになってしまうだけでしょう。その場合は、考えを否定せずに時が解決するのを待つのも手だと思います」
妊婦のワクチン接種に関するデマは、時間による解決の典型例だという。
「当初、メッセンジャーRNAワクチンを打つと、早産や流産を促してしまうといった話が流布していたようです。しかし、実際は早産や流産は増えておらず、むしろワクチンを打つと妊娠中にコロナにかかる可能性が低くなり、生まれてくる子どもはワクチンの効果で一定期間コロナにかかりにくくなるといったことが分かってきました。その結果、今では多くの妊婦がワクチンを打つようになりました」
新型コロナに関するデマやフェイクニュースから身を守るためには、情報源をたどる習慣と他者を受け入れる寛容さ、この二つを身に付けることが肝心なようだ。
京都大学医学部卒業後、オーストラリア国立大学大学院博士課程修了。金沢医科大学血液免疫内科、スイス・バーゼル免疫学研究所、東京都臨床医学総合研究所、大阪大学医学部教授、同大学大学院医学系研究科教授を歴任。医学博士・PhD。著書に『新型コロナ 7つの謎 最新免疫学からわかった病原体の正体』(講談社ブルーバックス)、『新型コロナワクチン 本当の「真実」』(講談社現代新書)などがある。