森保監督が語った
クロアチア戦の戦い方

序盤で大苦戦を強いられたアジア最終予選を、途中から巻き返して突破。7大会連続7度目のW杯出場を決めた直後から、森保監督はカタール大会へ向けたチーム作りの指針をこう定めてきた。

「基本的に4バックでチーム作りをしながら、状況に合わせて3バックも選択肢に持つ」

 例えばドイツ戦の後半途中からは、左ウイングバックに三笘、右に伊東と代表戦では一度も導入していない形で逆転に成功した。所属クラブでプレーした経験があるポジションならば、ぶっつけ本番でもその選手が持つ力が代表へ還元される。歓迎すべき循環が生まれていると森保監督は喜ぶ。

「多くの選択肢を持てるのは、簡単なようで実はそうではない。まずはいい選手たちがいてくれて、柔軟に対応してくれているのが監督としてありがたい。組織力で戦えるのは間違いなく日本の良さですけど、そこへ1対1の局面で勝っていけるような選手たちの強い個が加わり、さらに数的優位を作り出せる連携および連動もあって、組織力そのものもさらに強くなっている」

 代表メンバー26人でヨーロッパ組は19人。73.1%に達した占有率は、前回ロシア大会の65.2%、前々回のブラジル大会の52.2%を上回っている。冨安が言うように、日常から厳しい環境でプレーするヨーロッパ組の濃密な経験が、代表のアベレージをも大きく引き上げた。

 その結果としてドイツ、スペインを相手に発現され、勝利をつかみ取る要因になった「カメレオン力」を、森保監督は「秘策でもないし、大胆な采配でもない」と位置付ける。

「対戦相手との噛み合わせの中で、どのようなメンバー編成をして、どのようなゲームプランを立てればいいのか、というところで選手たちが素晴らしい個の能力を見せてくれている。交代を含めた采配が当たったかどうかは、みなさんに自由に見ていただいた上で批評していただければ」

 息つく間もなく、次なる戦いのキックオフが5日午後6時(日本時間6日午前0時)に迫っている。負けた時点で終わりのノックアウトステージ。その初戦となるラウンド16での対戦が決まった、前回ロシア大会準優勝のクロアチア代表の印象を森保監督はこう語っている。

「選手個々の素晴らしい能力を組織力として発揮しながら非常に柔軟に、かつ粘り強く戦えるチームだと思っています。戦うメンタリティーという部分においては、日本人のそれと似ている、と思わせるような試合を今大会でもしています。われわれのこれまでのチーム作りの中でも、クロアチアが前回ロシア大会で見せた戦い方を参考にしている部分があります」

 グループステージで見せた二つのシステムのどちらで前半に臨むのかを、森保監督はスペイン戦から一夜明けた時点で「ちょうど考えている」と煙幕を張るように語った。日本がそうであるように、クロアチアも日本を徹底的に分析してくる中で、吉田が決意を新たにした。

「これから分析のイタチごっこが始まる。さらにいい準備と分析をして、僕たちもオプションをそれこそ三つぐらいまで持っていかなきゃいけないんじゃないか、と思っています」

 日本は過去に3度、ラウンド16に挑むもすべてはね返された。2002年の日韓共催大会はトルコに0-1で、10年の南アフリカ大会は0-0のままもつれ込んだPK戦でパラグアイに敗れた。前回ロシア大会では、試合終了間際を含めた3連続失点でベルギーに無念の逆転負けを喫している。

 しかし、今大会の日本はカメレオンのように自在に変化する柔軟性を搭載している。クロアチアに敗れた1998年のフランス大会、同じく引き分けた06年のドイツ大会では持ち合わせていなかった武器に彩りを加えながら、まだ見ぬベスト8以降の世界へ通じる扉をこじ開ける準備を整えていく。