【スタンフォード発】日本とアメリカの性教育の決定的な差

スタンフォード大学・オンラインハイスクールはオンラインにもかかわらず、全米トップ10の常連で、2020年は全米の大学進学校1位となった。
世界最高峰の中1から高3の天才児、計900人（30ヵ国）がリアルタイムのオンラインセミナーで学んでいる。そのトップがオンライン教育の世界的リーダーでもある星友啓校長だ。全米トップ校の白熱授業を再現。予測不可能な時代に、シリコンバレーの中心でエリートたちが密かに学ぶ最高の生存戦略を初公開した、星校長の処女作『スタンフォード式生き抜く力』が話題となっている。
ベストセラー作家で“日本一のマーケッター（マーケティングの世界的権威・ECHO賞国際審査員）”と評された神田昌典氏も、
「現代版『武士道』というべき本。新しい時代に必要な教育が日本人によって示されたと記憶される本になる」
と語った本書の要点と本に掲載できなかった最新情報をコンパクトに解説する本連載。
6/18に「情報7daysニュースキャスター」、7/2に「朝日新聞be on Saturdayフロントランナー」出演で話題の著者が、世界最先端の「最新脳科学に基づく生き抜く力」を紹介する本連載。今回は教育現場の最前線で奮闘する二人の対談前編をお届けしよう。

星友啓（以下、星）：今回は対談ゲストに、三戸麻子さんをお招きしました。

　三戸麻子さんは、2011年より「国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 母性内科」で、現在は医長として、病気を持った女性の妊娠前～産後の診療を行っておられます。

　そして昨年から、「スタンフォード大学内科Primary Care and Population Health」に訪問され、米国のプレコンセプションケア（将来の妊娠を考えながら女性やカップルが自分たちの生活や健康に向き合うこと）や、早期健康教育、周産期医療に関する研究に尽力されています。

「若いときから妊娠・出産に関する正しい知識を身につけ、それを実践することで自分や赤ちゃんがより健康になることができる」という考えを広めるべく活動されています。

　今回は、内科医として医療に尽力されてきた経験を踏まえ、「プレコンセプションケア」をテーマにお話を伺います。

プレコンセプションケアとは

星：現在大注目の「プレコンセプションケア」が今回のメインテーマですが、これはどういった概念か教えていただけますか？

三戸麻子（以下、三戸）：はい。コンセプションは「妊娠」という意味で、「プレ」「コンセプション」なので「妊娠をする前、意識する前からの知識やケア」となります。

　私がプレコンセプションケアの重要性に気がついたのは、22歳の高血圧の妊婦さんを担当したときでした。

　彼女は妊娠前から高血圧でしたが、そのまま妊娠しました。

　その結果、高血圧が妊娠中に悪化し、赤ちゃんは死産となってしまいました。

　彼女は、次はベストな状態で妊娠したいと思い、高血圧について詳しく調べ、血圧を整えるために生活習慣の改善から試みました。でも、それだけでは血圧は下がりませんでした。

　ですが、薬を使った治療を続け、2年後、血圧がちょうどよくなった時期に妊娠し、無事、元気な赤ちゃんを出産することができたのです。

　これにより、妊娠前の病気の管理がとても大切だと、私自身、強く実感したのです。

　その後、アメリカを中心に海外で行われている「プレコンセプションケア」という概念を知り、勉強していくうちに、病気を持つ人だけではなく、健康な人にもプレコンセプションケアが必要であること。また、日本ではその知識や教育等、様々な面で体制が整っていないことに疑問を持ち始め、「プレコンセプションケアを広めたい」と思い、どんどんハマっていった感じですね。

星：妊娠前から出産に影響を及ぼす要因（高血圧など）について知っていれば、心構えもできます。この「知る」というフェーズを踏むことはとても大事ですね。

三戸：そうです。まずは自分の健康状態を知ることが大切です。

　そのうえで改善しつつ、必要あれば治療をしていきます。

　赤ちゃんの臓器の大切な部分は、妊娠9週には大部分が出来上がります。

　妊娠9週というとごく早期なので、自然妊娠だと妊娠していることすら気づかない人も結構います。

　しかし、この時期の母体の健康・栄養状態はとても大切で、赤ちゃんの臓器の形成にも悪影響を与えることがあります。

　さらに最近の研究では、受精した時点での男女の健康・栄養状態が、赤ちゃんの将来の健康に関係することもいわれています。