各国の利上げなど、不確定要素への対応に追われる銀行業界だが、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)の業績は絶好調だ。2022年4~9月期に連結業務純益(本業の利益)で中間期ベース過去最高をマークし、懸案だった銀行単体の収益も純利益で3メガバンク首位を奪還した。特集『総予測2023』の本稿では、そんな三菱UFJFGの亀澤宏規社長に、収益底上げの秘密を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 新井美江子)
マーケットのボラティリティの高まりは
ビジネスチャンスにもなり得る
――2022年は金融業界にとり、各国の利上げや円安などに翻弄された一年だったのではないですか。
確かに経営のかじ取りが非常に難しい環境でした。23年も、ウクライナ戦争の長期化やインフレ進行、地政学リスクの高まりなどを引き続き注視する必要があります。
地域別では、エネルギー価格の上昇を背景に物価高騰が続き、インフレ抑制のために金融引き締めを続ける欧州は景気悪化の懸念が大きい。同じく金融引き締めを行う米国は、いったん景気が落ち込むといわれていますが、(需要が底堅く)経済が総崩れに向かうことはないと思っています。ただし米中対立の行方は常に懸念点です。
翻って日本は、インバウンド需要の増加などがあるため緩やかに景気回復するとみています。
――不確定要素が多そうです。
どんな外部要因にもプラス面とマイナス面があります。重要なのは、それらをどうマネージするか。
実際、22年はマーケットのボラティリティが高まったことで、金融サービスに対するお客さまのニーズが増加しました。為替や金利のヘッジ、資金流動性の確保といったニーズです。こうしたビジネスチャンスの取り込みにより、わが社の22年4~9月期の業務純益(本業の利益)は中間期ベースで過去最高となっています。
――三菱UFJ銀行単体の業務純益は22年3月期までの数年間、3メガバンク最下位に沈んでいました。
22年3月期に純利益で7期ぶりに1兆円超えを達成するなど、グループ連結では圧倒的な強さを見せつける三菱UFJFG。しかし、グループの中核である三菱UFJ銀単体の業務純益(資金利益といった、銀行の本業による利益。一般企業の営業利益に当たる)はここ数年間、3メガ最下位に沈んでいた。次ページでは、銀行単体の業績が足踏みを強いられた理由や、その“トンネル”から抜け出すために行った施策、23年以降のさらなる収益拡大に向けた注力分野などについて、亀澤社長の率直な考えを聞いた。