安いニッポン 売られる日本#8Photo:Symphonie/gettyimages

新型コロナウイルスの感染拡大による打撃を受け、日本の地価は6年ぶりに下落した。オフィス需要や旅行需要が低迷しているのだから、無理もない。この局面が海外から見ると、投資妙味に満ちているようだ。特集『安いニッポン 買われる日本』(全24回)の#8では、日本の不動産のお買い得さに殺到する海外マネーの動向を伝える。(ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)

「日本の不動産は割安」
殺到する海外マネー

「見た目には閑散としているけれど、『物件を買いたい』という問い合わせは全然減っていません。香港やタイに加え、米国の投資家もいますよ」

 こう言ってニンマリしたのは、北海道倶知安町の不動産仲介業者だ。盛夏の今からさかのぼること半年余り、2021年初の真冬に語った言葉である。

 倶知安町と近隣町村の一帯は「ニセコエリア」と呼ばれるアジア屈指のスノーリゾートで、旅先としても不動産投資先としても人気沸騰中だ。スノーシーズンには海外から多数のインバウンド客が押し寄せるのだが、20~21年の冬は新型コロナウイルスの影響でさすがに人影まばら。当時はコロナ禍からの出口がまったく見えず、ニセコににぎわいがいつ戻るのか、展望は極端に不透明だった。

 そんな「視界ゼロ」の時期にもかかわらず、「ニセコの不動産を買いたい」という意向が、世界中から寄せられていたのである。

 ニセコだけではない。実はコロナ禍の中で、日本は世界有数の不動産投資のホットスポットとなっている。ニセコのようなリゾート物件、東京のオフィスなど投資対象はさまざまだが、根底にあるのは「日本の不動産が安い」という事実だ。

 そして日本の不動産をターゲットとした「1兆円ファンド」の胎動まで、聞こえ始めているのである。