フリーランスの今よりも
会社員時代のほうが不安だった

 例えば住宅ローンを組むときなど、フリーランスは審査が厳しくなると言われますが、それもおかしな話です。会社員のほうが安定しているといっても、ローンを返済中の数十年の間に会社がなくなったり、そうでなかったとしても自分から会社を辞めてしまったら、全然安定しているとは言えないわけです。

 私が人生の中で最も不安だったのは、20代の会社員時代でした。将来どうなるのか。このまま、うだつが上がらない人生で終わってしまうのか、不安に押しつぶされそうでした。しかも意を決して転職を決めた会社が、倒産してしまったのです。

 失業して何もかも失って、ぼんやりと空を眺めていた28歳の夏を今も覚えています。ただ、不思議なことに喪失感はあっても、それほど未来への不安はありませんでした。そこまで落ちても、ちゃんと生きている自分がいたからです。

 フリーランスの仕事をするようになってからは、会社員時代ほど不安を感じなくなりました。おそらく、もう誰のせいにもできなくなったからです。会社のせいでも、上司のせいでもない。これから起きることは、すべて自分のせい。しかし、そのほうが私にはすっきりした。自分で自分の未来をつくっていけばいいとわかったからです。

 後に取材で聞いたのは、人間が最も嫌うのは変化だということでした。安定が大好きで、変わるのは嫌い。それは人間の本能です。変化は、見通している未来を脅かすことだから。しかし、自分は変わらなくても、周囲は確実に変わっていきます。そうすると、やはり未来は見通せなくなる。これこそが、不安の原因です。

 自覚しなければいけないのは、未来を見通すことなど誰にもできないということ。未来は見通すものではなく自分でつくるものです。自分で切り拓けばいいのです。