12月に入り、急に寒さが厳しくなり、あわてて防寒具を出したり買いに走ったりした人も多いのではないでしょうか?
寒さに困っているのは、人間だけではありません。じつは、大阪大学豊中キャンパスの地層から化石が発見された「マチカネワニ」もその一種。
今回は、絶滅生物が自ら「絶滅理由」を語るという一風変わった書籍『わけあって絶滅しました。』から、そんなマチカネワニのお話を紹介します。慌ただしい年末にちょっと一息、読んでみてください。
マチカネワニに、絶滅理由を聞いてみた。
新生代の第四紀、更新世中期に絶滅したとされる「マチカネワニ」。さて、この生き物は、どうしてほろんでしまったのか……。その「理由」を、自ら語ってもらいましょう。
寒さからのがれられなくて絶滅
……今、魚が目の前を通りすぎていったわけですけれども。
寒さで体が思うように動かないというのは……予想外でした、はい。
口を細長くして、水中で魚をつかまえやすくなったのまでは成功……だと思うのですが。
すむ場所をまちがえたというか、考えなく南から移動してきたのが、まずかったのかなと。
わたしは……、もともとアジア大陸にいたのですが、氷期に陸地がつながったときに日本に迷いこみまして。
寒い氷期は海水面が下がって、日本と韓国、ロシアなどが地続きになるので海沿いに歩いてこれたわけです。
ところが日本の奥のほうまで入りすぎまして……。気づいたら、アジア大陸にもどれなくなっていました。
さらに寒さで動きがにぶり、えものの魚もつかまえられなくなって、ついに絶滅したわけです、はい。
マチカネワニって、どんな生き物?
大阪の「待兼山」で化石が発見された大型のワニ。現生で最大のワニであるイリエワニよりも大きく、細長い口をふり回して魚をつかまえていたようだ。海水面が下がった氷期に日本にやってきて、あたたかくなると日本列島の奥深くに入りこんでいった。そのため、再び氷期になっても大陸にはもどれず、寒さで動きがにぶり、魚がとれずにほろびてしまったのだろう。
(本原稿は丸山貴史著『わけあって絶滅しました。――世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』の内容を編集して掲載しています)
【訂正】記事初出時より以下の通り訂正しました。
見出し2か所について、正しくは「マチカネワニ」とすべきところが「イリエワニ」となっている誤植があり、訂正いたしました。