楽天底なしの赤字#2Photo:JIJI

楽天グループが2020年4月の携帯電話事業の参入と同時に打ち出した月額「2980円」という破格の料金体系は、NTTグループの「ahamo(アハモ)」の襲来で打ち砕かれた。対抗して繰り出したのが「1GBまで0円」という常識外れの料金体系だが、携帯電話基地局の5年前倒し整備による設備投資がかさみ、ただでさえ苦しい携帯事業の赤字は雪だるま式に膨らんでいる。果たして楽天は赤字から脱却して立ち直ることができるのか。『楽天 底なしの赤字』(全7回)の#2では、通信大手に比べて圧倒的劣勢にある楽天の起死回生策を追う。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

圧倒的劣勢にある楽天モバイル
それでも三木谷氏が強気を貫く「根拠」

「これなら勝てるシナリオになる」。

 東京・二子玉川の楽天グループ本社で、三木谷浩史会長兼社長ら経営幹部は、携帯電話子会社、楽天モバイルの契約者データをにらみながら、一つの手応えをつかんでいた。

 楽天モバイルの経営陣による毎朝定例の会議。三木谷氏のほか、同社の山田善久社長、タレック・アミン副社長、矢澤俊介副社長ら幹部が勢ぞろいしていた。コロナ禍でWeb会議が増えたものの、楽天モバイル幹部は報告会を毎朝欠かさず開いている。

 最近の会議で議題になっているのは、楽天モバイルの契約者による、楽天グループ内のサービスの取引量の増加だ。1億人を超える会員基盤を誇る(楽天市場や楽天カードを主軸とする)「楽天経済圏」の相乗効果が数字となって目立ち始めた。

 2020年4月に事業を本格的に開始した楽天モバイルの累計申し込み契約者数は今年4月末で400万件。5月11日には410万件にまで達した。携帯事業の戦略を策定するための最低限のデータのサンプル数としては、充実度を増していると言える。

 大手3社との実力差は歴然としている。3月末の大手3社の契約者数は、NTTドコモが8263万件、KDDIが6039万件、ソフトバンクが4521万件で、楽天は足元にも及ばない。三木谷氏は「4位にとどまるつもりはない」と強弁しているが、現実的に4位を脱却するには他社から数千万単位の契約を奪わなければならない。

 それでも、楽天の河野奈保常務執行役員は「過去1年間のモバイルの契約者のデータの動きを見て、何千万ユーザーの獲得を目指せるシナリオが見えてきた」と自信を示す。

 携帯事業で圧倒的な劣勢にある楽天だが、三木谷氏らは過去1年間のデータを基に「勝てるシナリオ」を探り当てつつあるようだ。三木谷氏が強気の姿勢を貫く「根拠」はどこにあるのか。