開成、麻布、桜蔭、雙葉、筑駒、渋幕……東京・吉祥寺を中心に都内に展開する進学塾VAMOSは、「入塾テストなし・先着順」で生徒を選抜しないが、「普通の子ども」を有名難関校に続々と合格させると話題の塾だ。子どもの特徴を最大限に生かして学力を伸ばす「ロジカルで科学的な学習法」が、圧倒的な支持を集めている。本稿では、VAMOSの代表である富永雄輔氏の最新刊『ひとりっ子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)から、特別に一部を抜粋して紹介する。

中学受験を考える親が絶対知っておきたい「偏差値との向き合い方」Photo: Adobe Stock

偏差値を見てイライラしてしまう親

 お金も時間も充分にかけていることもあって、ひとりっ子の親は、結果を急ぎすぎる傾向にあります。

「教育のマニュアル本もたくさん読みました。評判の塾にも入れました。送り迎えもしています。だから、早くその結果は?」というわけです。

 しかし、そんな魔法は存在しません。とくに、誰もが最も気にするのは「偏差値」です。

 中学受験のための模擬試験を受ければ、たとえ小学生でも容赦なく偏差値がはじき出されます。しかし、それをはじき出すテストには、これまで公立の小学校で学んできた内容では解けない問題が多く出題されます。

 ですので、最初のうちは29だの33だのというとんでもなく低い数値になることもしばしばで、親は大ショックを受けます。

 ただ、そもそも中学受験の偏差値は、高校受験の偏差値よりも低く出て当然なのです。高校受験の模擬試験はほぼ全員が受けますが、中学受験は、教育への意識が高い家庭の子どもが受けます。つまり、通っている塾のレベルや母集団の違いで、数字にばらつきが出てしまうのが偏差値なのです。

 そうしたことを知らないと、偏差値が伸びないことに焦ってしまい、「勉強の効果が出ていない」「塾が合っていない」と間違った判断をします。

 ひとりっ子の親ほど、急いで間違えるのです。

「偏差値の伸び=学力の伸び」ではない

 まず理解しておいてほしいのは、「偏差値が伸びている=学力が伸びている」ではないということです。

 偏差値は相対的なものですから、自分の子どもが大きく伸びていても、周囲が頑張っているために、それがなかなか偏差値に反映されないというケースはよくあります。

 逆に、周囲のレベルが低い模擬試験を受ければ、偏差値は高く出ます。だから、「偏差値を伸ばす」ということには、たいした意味はないのです。

子どもの学習を急かさない

 低学年から5年生の子どもにとって、「相対的な偏差値」よりも重要なのは、「絶対的な学力」です。実際に、偏差値が伸びていなくても学力が伸びている子はたくさんいます。

 偏差値や成績は周囲のレベルに影響されるため、急に跳ね上がったり、頑張っているのに伸びなかったりと、おかしな動きをすることがあり、あまりあてになりません。

 一方で、学力は「やっただけ」伸びますし、「やらない」と伸びません。だから、私は偏差値ではなく学力を重視しているのです。

 では、偏差値のように数値化できない学力は、どう測ったらいいのでしょうか。

 私は、その子が「前に教えた内容ができているかどうか」で判断しています。先週に教えた内容が今週はできていれば、学力は伸びていると考えます。

 こうして、「先週覚えたものは今週身につき、今週覚えたものは来週身につき……」というステップを踏むことで、その子の学力は確実に伸びます。

 一つひとつは小さなステップでも、段階的にアップしていけば、やがて中学受験の志望校にも合格するのです。

基礎に時間をかけて大きく伸ばす

 とくにひとりっ子の親は、小さなステップをじっくり見守るのが苦手です。わが子の教育にいろいろ投資をしていれば、「もっと効率的な方法があるんじゃないの?」とイライラしてしまうのかもしれません。

 きょうだいが多い家庭であれば気づかないことにも、目がいってしまうのがひとりっ子の親です。子どもの数が多ければ、親もあまりかまっていられません。家事をやっているときに子どもたちがうるさく騒いでいたら、「あんたたち、30分でいいから公文やっていて」「お母さん忙しいんだから、漢字の勉強でもしていなさい」となり、子どもたちは必然的に基礎の繰り返しをする機会が増えます。

 一方で、ずっと子どもを見ていられるひとりっ子の親は、「また同じようなことやっているの?」「もっと先に進んだほうがいいんじゃない?」と、基礎の反復を軽視する傾向にあるのです。

 もちろん、基礎だけではなく応用力も必要です。しかし、基礎なきところに応用はありません。基礎がしっかりしてこそ、大きく伸びるのだということを忘れないでください。

(本稿は、『ひとりっ子の学力の伸ばし方』からの抜粋・編集したものです)