白内障患者は生活習慣の改善を
飲酒量については、飲酒の頻度(飲酒習慣なし、以前は飲酒習慣があったが現在はなし、週1~3回、週4~7回)、1日当たりの飲酒量〔飲まない、1日2ドリンク以下、2超~4ドリンク以下、4ドリンク超(1ドリンクはエタノール換算10g相当)〕を把握。さらに、両者の積により飲酒の生涯累積摂取量〔摂取なし、40以下、40超~60以下、60超~90以下、90超(単位はdrink-years)〕を算出した。また、飲酒以外の共変量として、喫煙習慣、生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満)の有無、屋外作業の有無、職業上の放射性被曝リスクの有無などを把握した。
症例群と対照群を比較すると、前者は飲酒習慣のある人や、高血圧・糖尿病患者や屋外作業をしている人の割合が有意に高かった。喫煙習慣や教育歴、職業上の放射性被曝リスク、脂質異常症、肥満の割合などは有意差がなかった。
前述の共変量を全て調整したロジスティック回帰分析の結果、飲酒頻度、1日当たりの飲酒量、生涯累積摂取量のいずれについても、高値であるほど白内障手術を受ける人の割合が高いという有意な傾向性が認められた(全てP<0.01)。例えば、過去に飲酒習慣のない人を基準として飲酒頻度が週4~7回の群のオッズ比(OR)は1.30(95%信頼区間1.21~1.40)であり、また飲酒頻度が週に1~3日〔OR1.10(同1.03~1.17)〕や、1日当たりの飲酒量が2ドリンク以下〔OR1.13(1.06~1.20)〕であっても、有意なオッズ比の上昇が認められた。
それに対して、以前は飲酒習慣があったものの現在は飲んでいない群はOR1.00(0.91~1.09)で、関連は非有意だった。なお、性別に解析した結果は、男性・女性ともに全体解析の結果と同様であり、全て有意な傾向性が認められた。生涯累積摂取量については、男性では90超〔OR1.26(1.14~1.39)〕で有意なオッズ比上昇が見られたのに対して、女性では40超~60以下〔OR1.31(1.14~1.51)〕でもオッズ比上昇が認められた。
感度分析として、既知の白内障リスク因子である糖尿病患者を除外した解析では、以前は飲酒習慣があったものの現在は飲んでいない群でオッズ比低下が認められ、特に女性でその傾向が強かった〔男性はOR0.93(0.81~1.06)、女性はOR0.86(0.74~1.00)〕。
著者らは、本研究では白内障リスクを入院での手術症例のみで判断しており、日帰り手術が含まれていないためリスクを過小評価している可能性があることなどを、限界点として挙げている。その上で、「日本人ではエタノール換算20g/日程度の低用量の飲酒であっても白内障リスクが上昇する可能性が示された。また、飲酒量と白内障リスクとの間に用量反応関係が認められた。白内障患者に対しては、飲酒量を抑えるという生活習慣の改善が推奨される」と結論付けている。
なお、飲酒が白内障の進行を促すメカニズムについては、「アルコール代謝は酸化ストレスと関連があり、その過程で発生する活性酸素種が水晶体タンパク質の変性を引き起こすといった経路が考えられる」と考察している。(HealthDay News 2022年12月19日)
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