今回ご紹介するのは、スケジュール管理の精度を高めるためのティップスと大切な考え方。
レコード会社の社員時代はプロデューサーとして、ミリオンヒットを10回記録した後、絶調期にニュージーランドに移住。その後、12年かけてリモートワーク術を構築してきた四角大輔氏。
この連載では、四角氏のあたらしい著書『超ミニマル主義』の中から、「仕事術」「ワークスペース」「働き方」「スケジュールとタスク」「デバイスと情報」「思考と習慣」「超時短メソッド」「人付き合い」「ストレスと脳疲労」「ビジネス装備」「バカンスの取り方」「深く眠る技術」など、すべてを「手放し、効率化し、超集中する」ための【全技法】を紹介していきます。

【スケジューリングのプロ】に学ぶ「予定管理3つのテクニック」とは?Photo: Adobe Stock

極端なほど専門性が高い何かのプロフェッショナルになるべき

「ビジネスパーソンは、何かのプロフェッショナルになるべき」

 ずっと、そう自分に言い聞かせ、誰にも真似されない専門スキルを習得すべく努めてきた。だが、我々は何よりも先に、「スケジューリングのプロ」にならないといけない。

 今回は、スケジュール管理の精度を高めるためのティップスと、大切な考え方をまとめてみたい。

〔その1.アポは15分単位で刻む〕

 ミーティングや会議の時間を設定する時、大雑把に30分単位で決めがちだが、それを15分で刻もう。30分、45分、60分、75分というように。人間の集中力は長くもたないので、必ず90分以下にすること。

 筆者が、会社員時代に最も多く使っていたのが「45分」だ。

 たまに「30分」と「75分」を投入し、時々「15分」という短い電話ミーティングを入れる。逆に、「60分」はほとんど使わなかった。アポの時間は「60分」が一般的なので、45分だと「いつもより短い」と相手は受け取る。

 相手が歳上で「45分なんて短すぎる」とネガティブな反応をするタイプの場合、「◯さんは多忙な方なので45分で終わらせますから」と言い切ってしまえば、悪い気がしないもの。

 本当に多忙な人は5~10分刻みだ。例えば、著名な起業家とのアポが奇跡的に取れて、秘書の方から「35分間」でお願いされたらどう感じるだろうか。

「忙しいのに捻出してくれた」「1分たりとも無駄にしないぞ」と、緊張感を持って臨むだろう。

「15分刻み思考」を導入することで、相手が自分とのアポを「いつもより短く、少し特別なもの」と考えてくれて、より集中して臨んでくれるメリットを手にできる。

 なお、急増したオンラインミーティングでは、時間を細かく刻みやすくなった。対面よりも電話に近いため、15分や30分という時間設定だってあたり前に提案できるのがいい。

 さらに、もう1つ大きな利点がある。アポを15分刻みにする習慣が身につくと、時間の読みが緻密になり、「時間そのもの」をより大切にできるようになるのだ。

 結果、一つひとつのアポを厳しく精査できるようになり、「アポの取捨選択能力」向上につながる。

 つまり、「時間を細かく刻む習慣」はそのまま、「スケジュール管理へのシビアな感覚」につながるということ。日本では、議題もなく惰性で招集される、無駄な会議がとても多いというデータがあることも知っておいてほしい(※1)。

〔その2.ルーティンも予約する〕

 ビジネスパーソンが最も犠牲にしがちなのが、心を休ませる「朝と夕方のセルフケアタイム」体を休ませる「リカバリータイム(睡眠)」、そして自分のタスクに集中する朝の「ソロワーク」である。この貴重な時間を「他人」に明け渡さないようにすべく、前もってカレンダーに「繰り返し登録」してしまおう。

 具体的な方法を、筆者の例で説明しよう。まずは睡眠

 予定の新規作成ボタンを押し、時間を「夜9時~翌朝4時」とし、タイトルに「リカバリータイム7時間睡眠」と書き、繰り返しを「毎日」に設定。これでカレンダー上では、未来永劫ずっと、睡眠時間が確保されたことになる。

 他の大切なルーティンもすべて、同様の方法で入れてしまおう。「守るべきルーティン」がカレンダー上で明確化すると、心の優先順位が上がり、安易に他人へ明け渡さなくなる。

 さらに、「仕事で使える空き時間」が可視化されるので、速く確かなスケジューリングが可能となる。

 こういった「つい軽視しがちな時間」を、真っ先にスケジューリングする習慣こそが、日々の時間の余白と、心の余裕を生み出してくれるのである。

〔その3.移動時間の算出能力を磨く〕

 昔の上司は、こんなテクニックを使っていた。

 ミーティング終了予定時刻の15分後に、電話のアラームを設定し、その音を電話の着信音と同じにしておく

 アラームが鳴ると緊急着信のフリをして電話を取り出し、打合せの相手に「緊急の連絡で」と一言詫びて会議室を出る。戻った後、低姿勢で「次があるのでここで失礼します」と言う。

 ぼくも見習って、弾丸トークが途切れない相手に、いつもこの策を講じていたが、デキるベテランはこんな荒技を使わず、経験から身につけた高い「時間読み能力」で乗り切る。

 遅刻癖がある人とのミーティングでは「いつもの遅刻時間」を計算に入れ、白熱して延びがちな会議の時間も、これまでの傾向から習慣的に「予想の延長時間」を算出する。

 そんな「時間読み」で意外に難しいのが「移動」だ。その第一歩としてやるべきは、正確な「移動時間」をカレンダーに入れる習慣を身につけること。地図アプリや乗換アプリでは、検索した移動行程をそのままカレンダーに転送できるし、スマホ搭載のAIが自動的に移動時間を検出してくれる。

 なのに人は遅刻する。何を隠そう、ぼくがそうなのだ。アプリ算出の移動時間をそのままギチギチに入れてしまい数分の遅刻……なんてことに。調べるとその原因は、テクノロジー依存にあるという。実際の交通機関には、渋滞や遅延の影響、駅の入口からホームまでの距離など「AIには計算できないリアル」が無数にある。

 そして、「迷った」が現代の遅刻の理由の大きな割合を占めると知っておこう。たとえ、デジタル技術が優秀だとしても、それを使うのは―必ずミスを犯す生身の人間であること―を決して忘れてはいけない(自戒の念を込めて)。

 つまり、この便利なツールに「人間が依存しすぎる」ために、逆に遅刻が増えているのだ。生活を効率化するデジタル技術が逆に足を引っ張る。まさに、テクノロジーのパラドックス。

 スマホが登場する前は「紙の地図」しかなく、「確かな移動時間の計算」なんて、熟練のタクシードライバーや、外回り営業のベテランといった、プロフェッショナルの専売特許だった。

 さらにその昔、ガラケーさえもなかった頃、待ち合わせに遅刻しても連絡の入れようもない。それゆえ、「かなりの余裕をもって出発」というのが基本ルールだった。これこそが、テクノロジーに頼れない当時の方が、遅刻が少なかった理由である。

日常的な移動には「15~30分の余白」が最適解

 次にやるべきは「移動時間」に、この古きよきアナログ思考を取り入れる形で、スケジュールの緩衝材となる「余白時間」を加えることだ。若かりし頃、アドバイスをくれた大先輩はこう言っていた。「常に30分前行動を心がけよ」と。

 この助言と昨今のテクノロジー環境から、日常的な移動には「15~30分の余白」が最適解という結論に、最近やっと至ることができた。

 移動時間が短かったり、なじみの場所であれば「ルート検索の所要時間+15分」初めての場所や街をまたぐ移動であれば「+30分」。新幹線や飛行機を使っての国内移動は「+60分」。

 滞りなく移動でき、早く到着しても困ることは何もない。「時間前にくるデキる人」と印象付けられれば、相手の緊張感を高められて仕事がやりやすくなるし、こちらはゆったりした気持ちでアポに臨むことができる。

 ただ、誰もが忙しい現代では、早すぎる到着は迷惑になる。15分以上前に着いた場合は「到着して時間を潰しています」と連絡を入れて、5分前に入るようにしよう。

 厳しいビジネスシーンを生き抜くには、テクノロジーを使いこなすだけではダメ。人間にしかできない「時間読み能力」をしっかり磨き、余白時間をしっかり見積もる「備えの心得」をもって働くべきなのである。

 コロナ禍以降、ミーティングの多くがオンライン化した。これによって、難しい移動時間を計算する手間が減り、楽になったのは間違いない。

 だが、オンラインミーティングを隙間なく詰めてしまい、強いストレスを感じる人が増えているという。実は、わずらわしいと思っていた移動時間が、小さな「リセットタイム=気分転換」の役割を果たしていたのだ。移動時間の代わりに、ミーティングの間には、確かな余白時間を入れるようにしよう。

※1 小林祐児「ムダな会議」による企業の損失は年間15億円 パーソル総合研究所(2018)
※2 公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2019」(2019)

『超ミニマル主義』では、「手放し、効率化し、超集中」するための全技法を紹介しています。ぜひチェックしてみてください。

(本原稿は、四角大輔著『超ミニマル主義』から一部抜粋したものです)

【スケジューリングのプロ】に学ぶ「予定管理3つのテクニック」とは?四角大輔(よすみ・だいすけ)
執筆家・環境保護アンバサダー
1970年、大阪の外れで生まれ、自然児として育つ。91年、獨協大学英語科入学後、バックパッキング登山とバンライフの虜になる。95年、ひどい赤面症のままソニーミュージック入社。社会性も音楽知識もないダメ営業マンから、異端のプロデューサーになり、削ぎ落とす技法でミリオンヒット10回を記録。2010年、すべてをリセットしてニュージーランドに移住し、湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営む。年の数ヵ月を移動生活に費やし、65ヵ国を訪れる。19年、約10年ぶりのリセットを敢行。CO2排出を省みて移動生活を中断。会社役員、プロデュース、連載など仕事の大半を手放し、自著の執筆、環境活動に専念する。21年、第一子誕生を受けて、ミニマル仕事術をさらに極め――週3日・午前中だけ働く――育児のための超時短ワークスタイルを実践。著書に、『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』(サンクチュアリ出版)、『人生やらなくていいリスト』(講談社)、『モバイルボヘミアン』(本田直之氏と共著、ライツ社)、『バックパッキング登山入門』(エイ出版社)など。