意味のイノベーションのプロセスにおけるデザインディスコース
さて、『突破するデザイン』は前著を出した後、ベルガンティがおよそ8年間、世界各地の大企業や行政機関にコンサルタント活動をして得た知見が披露されています。その結果が、意味のイノベーションのプロセス(図2)に反映されていると思います。
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1人で考え始め、ボクシングのスパーリングパートナーのような想定でビジョンなりを練り上げ、徐々に人数を増やしていきます。そして、かなりのレベルまでコンセプトが固まった段階で初めて外部の解釈者と討議するラボを設けるのです。ここでコンセプトはさらにたたかれ鍛えられます。
解釈者とはデザインディスコースで登場したネットワークと重なります。「同じ」と言わず「重なる」と私が説明するのは、デザインディスコースよりも意図的に人を選ぶからです。例えば、チーズの会社が新製品を考えるコンセプトの是非について有名レストランのシェフに意見を聞いても、競合メーカーも同様のことをしているかもしれません。
ですから独自性を持つためのポイントは、異なった分野でコンセプトのコアにある価値観を別の角度から見ている人を探すことです。「健康」という価値観であれば、スポーツジムで使用する機器を作っているメーカーの経営者も解釈者になります。一見、距離があると見える所にいる人との間にある「見えない糸」を探り当てていく点にノウハウがあります。
こうして外部で勝負したコンセプトなりをもう一度社内で検討するのですが、このパターンであれば大企業の社員も比較的「乗りやすい」プロセスです。従って、デザインディスコースは「解釈者ラボ」という社内用語と親しみやすい言葉に置き換わり、しかも、プロセスの最初にあったものが後半戦に移動したとも解釈できます。
ですが、ここで話は終わりません。以上だけでは解釈として中途です。