多くの高齢者がリスクのある状態で運転している

 この研究は、岡山県、広島県、香川県の11の医療機関が参加し、2021年1~5月に行われた。外来受診者に対する自記式アンケートにより、自動車運転や事故経験などに関する情報を把握。また、事故リスクを高める可能性のある医学的要因に関する情報を、簡単なテストや一般的な身体検査によって把握した。

 評価した医学的要因は、ポリファーマシー、サルコペニア、認知機能障害、フレイルおよびオーラルフレイル。このうち、ポリファーマシーは6種類以上の薬剤を1カ月以上服用していることで定義し、「お薬手帳」を医療スタッフが確認して評価。サルコペニアは、指輪っかテスト(両手の指で作った輪でふくらはぎを囲み隙間ができるか否か)、および30秒椅子立ち上がりテストで判定した。認知機能障害はMini-Cogテストに基づいて判定した。

 161人がこの調査に参加。そのうち既に免許を返納していた人や、ペーパードライバーなどを除外し、127人を解析対象とした。年齢は中央値73歳(四分位範囲70~78)、男性64.6%、女性35.4%であり、介護保険の利用状況は、95.3%が未利用で、要支援認定1が1人(0.8%)、同2が3人(2.4%)だった。

 運転の頻度は、60.6%が「日常的に運転をする」と回答し、その他の39.4%は「時々運転する」と回答した。この2群で比較すると、年齢、性別、介護保険の利用状況に有意な群間差はなかったが、外出頻度は日常的に運転する群の方が有意に高かった。他方、同居家族数、歩行時間、自宅から最寄り駅やバス停までの距離、友人などとの交流の頻度、整形外科や眼科の受診頻度、補聴器の使用率などには有意差が認められなかった。

 ポリファーマシーの該当者率は27.6%で、そのうち眠気を催すことの多い薬剤として、ベンゾジアゼピン系薬(睡眠薬や抗不安薬の一種)は12.5%に、抗ヒスタミン薬(アレルギー症状などの治療薬)は3.1%に処方されていた。運転頻度別でポリファーマシー該当者率を見ると、日常的に運転をする群が31.2%、時々運転する群は22.0%で前者の方が高いものの、群間差は有意でなかった。

 サルコペニアの該当者率は全体で8.7%であり、日常的に運転をする群は13.0%、時々運転する群は2.0%であって前者の方が高かった。

 認知機能障害(Mini-Cogテストが3点以下)の該当者率は全体で16.4%であり、前記と同順に18.2%、14.0%だった。フレイルの該当者率は全体で15.0%、オーラルフレイルは54.3%であり、これらはいずれも運転頻度で比較した場合の群間差は非有意だった。

 過去の交通事故の体験については、62.2%が「経験あり」と回答した。その割合は、日常的に運転をする群が29.9%、時々運転する群は46.0%であって、後者の方が高いものの、群間差は有意でなかった。免許返納の意思がある人の割合は同順に2.6%、14.0%であり、時々運転する群で高いという有意差が見られた。

 著者らは本研究について、認知機能障害やサルコペニアなどを簡便な方法で判定しており確実な診断に基づく解析ではないことや、サンプル数が十分でないことを限界点として挙げている。その上で結論を、「地域在住高齢ドライバーの交通事故に関連する可能性のある医学的要因の有病率が明らかになった。多くの高齢者が何らかのリスクのある状態で運転している現状において、高齢ドライバーの交通事故抑止のために、より厳格なスクリーニングの実施などの措置が必要と考えられる。同時に、地方に住む高齢者の生活を守る手段も確保されなければならない」とまとめている。(HealthDay News 2022年12月26日)

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