変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、6月29日発売)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)で、IGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏だ。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていく時代。これからは、組織に依存するのではなく、一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルにならざるを得ない。同書から抜粋している本連載の書下ろし特別編をお届けする。

「日本企業の競争力を下げている、ある習慣」競争力の高い企業に共通する特徴とはPhoto: Adobe Stock

中期経営計画を作っているのは日本企業だけ

 皆さんの会社では、中期経営計画を作成していますか。中堅以上の会社であれば、恐らくほとんどが3年に一度のイベントとして、膨大な時間と労力をかけて中期経営計画を作成していることでしょう。

 日本で中期経営計画の作成が始まったのは戦後と言われています。当時は成長に向けたゴールや道筋が明確で、ヒト・モノ・カネといった限られた資源を部門ごとに割り振るために中期経営計画は有効に機能したものと思います。

過去の延長からは、新しいものを生み出すことはできない

 多くの会社では、部門予算の積み上げで中期経営計画を作成していると思います。また、多くの場合、部門予算は前年比〇%増という形で、成長することが与件となっているのではないでしょうか。

 企業が外部から資金を調達している以上、もちろん成長は目指すべき成果の一つです。株主は成長による株価向上を求めるでしょうし、銀行に金利を支払うためには借入れた金額以上のキャッシュを創出する必要があるでしょう。

 ここでの問題は、過去の延長から新しいものは生まれないということです。VUCAの時代ともいわれる現代には、今日まで必要だったものが、明日には不要になる可能性があります

 過去20年間でスマホ革命によってニーズが著しく低下した商品やサービスは、地図、デジタルカメラ、現金、新聞、スケジュール帳など、例を挙げればきりがありません。この先さらに進展するデジタル革命によって消失する業界や職業は、私たちの想像を超えるでしょう。

引き算思考で未来を創造する

 今多くの企業で実施されている中期経営計画の作成は、今あるものを改善するための手段となっています。経営において改善を試みることは大切なことですが、新たな未来を創造することには繋がりません。また、変化の激しい時代に、3年間の行動を制約されるリスクにさえなりかねません。

 答えのない時代にすばやく成果を出すには、今あるものを所与とした足し算思考ではなく、引き算思考で未来を創造しましょう。足し算思考と引き算思考の違いを下図に整理していますので参考にしてください。

 引き算思考によって目指すべき未来像を描いた後は、世界中の人たちと連携しながら、新たな価値を生み出し、未来を創造していきましょう。もし実現をサポートするツールとして必要であれば、中期経営計画の作成を検討しましょう。

アジャイル仕事術』では、引き算思考の具体的な身につけ方以外にも、働き方をバージョンアップするための技術をたくさん紹介しています。

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤(IGPI)に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。