具体的支給の手続きは
どのように行うのか

 現在の判決金の支給対象は、大法院が2018年に三菱重工業や日本製鉄(旧新日鉄住金)などに支給するよう命じた15人の元徴用工が対象であり、支給すべき判決金は1億~1億5000万ウォン(約1033万円~1550万円)とその遅延利息である。

 その後、日本企業に対する損害賠償訴訟2審が進行中の元徴用工(約140人)と、大法院で審理中の元徴用工(約110人)が最終的に勝訴すれば、追加的に基金を増やす必要がある。ただ、訴訟には時効があるため、判決金支給対象者が無限に増えるわけではない。

 現在政府は、ポスコが当初拠出する予定だった100億ウォン(約10億3333万円)の残金40億ウォン(約4億1333万円)の拠出を、同社に求めている。だが、支給対象者が増える場合には、日韓請求権協定から恩恵を受けた韓国電力、KORAIL(韓国鉄道公社)、ハナ銀行(旧韓国外換銀行)、KT&Gなど16の企業、公共機関を選定し、拠出を求める考えだという。

 財団が寄付金を集めるに当たっては、「韓国企業が肩代わりした」との批判を和らげるため、全国経済人連合会(全経連)内に別途機構を選定し、基金の管理を委託する方向で検討しているという。

 判決金の受領対象となるのは当面最初の確定判決を受けた15人だが、そのうち12人は既にこの世を去っている。団体が元徴用工とその遺族に判決金の受領を拒否させることも、この15人の中核的な元徴用工であれば、それほど難しくないかもしれない。

 しかし、訴訟の2審が進行中の人々、大法院で審理中の人々は今後訴訟を通じて、受け取りが可能となるまでには相当な時間が必要だろう。団体がこうした人々と政府の接触を全て妨害することは容易ではない。政府と財団が根気よくこうした人々を説得していくならば見通しは開けてくるであろう。

 朝鮮日報は、「日本企業が韓国に持つ資産を強制的に処分したとしてもたいした額にはならず、判決額には程遠い。強制処分に伴う深刻な韓日の摩擦も懸念せざるを得ない」「日本との対立をただ続けることが本当に被害者のためになるのか、改めて考えるべき時期に来ているようだ」と指摘している。

 さらに「『今の状況では、かつて日本から受け取った請求権資金で実際に成長した韓国企業が動くべきだ』との世論が大勢を占める」とも述べている。

 韓国でマスコミが伝える世論、世論調査の結果に示される世論は日本に対して厳しいものが多い。しかし、韓国人は本音と建て前を使い分ける。本音は案外、朝鮮日報の報道に近いのかもしれない。