創業9年目で売上300億円と、急成長を遂げている家電メーカー、アンカー・ジャパン。そのトップに立つのは、27歳入社→33歳アンカーグループ最年少役員→34歳でアンカー・ジャパンCEOに就任と、自身も猛スピードで変化し続けてきた、猿渡歩(えんど・あゆむ)氏だ。「大企業に入れば一生安泰」という常識が崩れた現代、個人の市場価値を高めるためには「1位にチャレンジする思考法」が必要だと猿渡氏は語る。そんな彼が牽引してきたアンカー・ジャパンの急成長の秘密が詰まった白熱の処女作『1位思考──後発でも圧倒的速さで成長できるシンプルな習慣』が話題となっている。
そこで本書の発売を記念し、ビジネスパーソン「あるある」全20の悩みを猿渡氏にぶつける特別企画がスタートした。第13回目は、「圧倒的速さで出世する人の特徴」について聞いた。(構成・川代紗生)

1位思考Photo: Adobe Stock

「バックキャスティング思考」で
確実に目標達成する

──上司の信頼を得て、ハイスピードで出世できる人の共通点は何だと思いますか?

猿渡歩(以下、猿渡):私が意識しているのは「バックキャスティング思考」です。

 学生時代からこの思考法で仮説を組み立て、目標達成に役立てていました。

──『1位思考』でも解説されていましたね。

猿渡:バックキャスティング思考とは、未来に視点を置き、理想となる未来像を描き、そこに向かってアクションを起こすことです。

 反対に、現在や過去のデータから未来を予測することを「フォアキャスティング思考」といいます。

 今年はこれくらいの売上を達成できたから、来年は前年比◯%そう、といった具合に、すでにあるデータをもとに仮説を立てる方法です。

 もちろん、フォアキャスティング思考が必要な場面もあるのですが、この考え方だけでは成長スピードが落ちてしまうことがあります。

 そのため、私は必要に応じて「バックキャスティング思考」を取り入れてきました。

1位思考

海外経験ゼロでいきなり米国大学へ!
バックキャスティング思考で現状打破

──「学生時代からバックキャスティング思考で考えていた」とおっしゃっていましたが、その頃のエピソードについて詳しくお聞きしてもよろしいですか?

猿渡:高校を卒業したあと米国の大学に入学したのですが、実は私にとって、海外に行くのはそれが初めてでした。

──海外旅行もなかったんですか?

猿渡:旅行も含め、海外経験は本当にゼロでした。

 英語は読み・書きは多少できましたが、話す・聞くはほとんどできませんでした。

 正直なところ、入学当初は授業についていくのも一苦労。

 さらに、授業の評価基準も日本と異なるところがあり、テストでいい点を取ればOK、課題を提出すればOKではなく、ディスカッションの参加点も評価基準に含まれていました。

 それでも、私は「この授業で絶対A評価を取る」という高いゴールを先に設定しました。

 まず目標を決め、達成するために何ができるか考えようと思ったのです。

──まさに、バックキャスティング思考ですね。
 そうはいっても、まだ会話にも慣れていない1年目に最高評価のAを取るのは大変だと思います。どのように仮説を組み立てましたか?

猿渡:ネイティブが話す英語を聞き取り、ましてや発言することは、海外1年目の私には難易度が高すぎる。それ以外の方法は何かないか、と考え尽くした結果、担当教授に直談判することにしました。

「私は留学1年目なので、ディスカッションに参加するのは難しい。レポート課題を追加でやるので、ディスカッションの参加点として補塡してほしい」と交渉したのです。

──なるほど、そういう手段もあるんですね。
 普通は「ネイティブについていけるように英会話の練習を頑張る」というルートを選んでしまいそうですが。

猿渡:いま考えると、完全に開き直りだとは思います。

 とはいえ、交渉の結果、教授には追加のレポート課題を2つもらい、無事にAを取ることができました。

 ディスカッション参加点をもらうことにこだわらず、本来の「A評価を取ること」という目的を見失わなかったからこそ、別の手段が浮かんできたのだと思います。

 目的を達成する手段は一つとは限りません。

 バックキャスティング思考で色々な手段を検討すれば、最適な方法が見つかるはずです。